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・・・外題は、塩原多助、尾上岩藤に、小栗判官、照手の姫、どんなによかろう。見たいない。 祖母の顔を見るやいなや、婆さんは、飛び立った様にその小さい眼をかがやかしながら云う。「行ってお見ねえか?「私は、あすこまで歩くのが事でなし・・・
宮本百合子
「農村」
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・・・だから原敬を暗殺した中岡良一が死刑に処せられないときまったとき、父は驚喜して当時の裁判長を名判官とたたえた。かくのごとく父は、私利をはかって超個人的道義的任務を忘れたものをすべて腐敗せるものとして憎悪する。自己の身命を超個人的道義的任務に捧・・・
和辻哲郎
「蝸牛の角」