・・・もし陛下の御身近く忠義こうこつの臣があって、陛下の赤子に差異はない、なにとぞ二十四名の者ども、罪の浅きも深きも一同に御宥し下されて、反省改悟の機会を御与え下されかしと、身を以て懇願する者があったならば、陛下も御頷きになって、我らは十二名の革・・・ 徳冨蘆花 「謀叛論(草稿)」
・・・今の日本人はちと狸を軽蔑し過ぎるように思われやすからちょっと全国の狸共に代って拙から諸君に反省を希望して置きやしょう」「いやに理窟を云う狸だぜ」と源さんが云うと、松さんは本を伏せて「全く狸の言う通だよ、昔だって今だって、こっちがしっかり・・・ 夏目漱石 「琴のそら音」
・・・批評哲学とは知識に対する深い反省である。この故にそれは哲学である。それは知識と真実在との深刻なる対決である。しかし真実在の問題は不可知的なる物自体の問題として捨てられた。問題を打ち切ってしまえばそれまでであるが、そこに多く問題が残されている・・・ 西田幾多郎 「デカルト哲学について」
・・・これらの諸件、よく功を奏して一般の繁盛をいたせば、これを名づけて文明の進歩と称す。 一国の文明は、政府の政と人民の政と両ながらその宜を得てたがいに相助くるに非ざれば、進むべからざるものなり。就中、人民の政は思いのほかに有力なるものにして・・・ 福沢諭吉 「学者安心論」
・・・非役の輩は固より智力もなく、かつ生計の内職に役せられて、衣食以上のことに心を関するを得ずして日一日を送りしことなるが、二、三十年以来、下士の内職なるもの漸く繁盛を致し、最前はただ杉檜の指物膳箱などを製し、元結の紙糸を捻る等に過ぎざりしもの、・・・ 福沢諭吉 「旧藩情」
・・・ 中津の藩政も他藩のごとく専ら分を守らしむるの趣意にして、圧制を旨とし、その精密なることほとんど至らざるところなし。而してその政権はもとより上士に帰することなれば、上士と下士と対するときは、藩法、常に上士に便にして下士に不便ならざるを得・・・ 福沢諭吉 「旧藩情」
私の文学上の経歴――なんていっても、別に光彩のあることもないから、話すんなら、寧そ私の昔からの思想の変遷とでもいうことにしよう。いわば、半生の懺悔談だね……いや、この方が罪滅しになって結句いいかも知れん。 そこでと、第・・・ 二葉亭四迷 「予が半生の懺悔」
山の神の秋の祭りの晩でした。 亮二はあたらしい水色のしごきをしめて、それに十五銭もらって、お旅屋にでかけました。「空気獣」という見世物が大繁盛でした。 それは、髪を長くして、だぶだぶのずぼんをはいたあばたな男が、小・・・ 宮沢賢治 「祭の晩」
・・・社会歴史の展望的な面へ科学的でない批判を集中して、資本主義の立場にたつ政治家がこんにち猛烈に反省をしなければ、日本の青年は政治的無関心に陥いるしかないといっている点など、こんにちの日本のブルジョア思想家の害悪をみないわけにはゆきません。こん・・・ 宮本百合子 「新しい抵抗について」
・・・の検討は、われわれの関心、反省を、自身のプロレタリア作家としての活動の吟味に導いて来る。作家同盟で目下とり上げられている組織活動と創作活動の統一の問題にふれて来るのである。 十月号『プロレタリア文学』に鈴木清がこの問題について「一歩前進・・・ 宮本百合子 「一連の非プロレタリア的作品」
出典:青空文庫