・・・これは適当の方法をもって必ず皆済していただかねばなりません。私はそれを諸君全体に寄付して、向後の費途に充てるよう取り計らうつもりでいます。 つまり今後の諸君のこの土地における生活は、諸君が組織する自由な組合というような形になると思います・・・ 有島武郎 「小作人への告別」
・・・に描かれたる肉霊合致の全我的活動なるものは、その論理と表象の方法が新しくなったほかに、かつて本能満足主義という名の下に考量されたものとどれだけ違っているだろうか。 魚住氏はこの一見収攬しがたき混乱の状態に対して、きわめて都合のよい解釈を・・・ 石川啄木 「時代閉塞の現状」
・・・昔からこの刻限を利用して、魔の居るのを実験する、方法があると云ったようなことを過般仲の町で怪談会の夜中に沼田さんが話をされたのを、例の「膝摩り」とか「本叩き」といったもので。「膝摩り」というのは、丑満頃、人が四人で、床の間なしの八畳座敷・・・ 泉鏡花 「一寸怪」
・・・自分は今井とともに牛を見て、牧夫に投薬の方法など示した後、今井獣医が何か見せたい物があるからといわるるままに、今井の宅にうち連れてゆくことにした。自分が牛舎の流しを出て台所へあがり奥へ通ったうちに梅子とお手伝いは夕食のしたくにせわしく、雪子・・・ 伊藤左千夫 「奈々子」
・・・言換えると二葉亭は周囲のもの一切が不満であるよりはこの不満をドウスル事も出来ないのが毎日の堪えざる苦痛であって、この苦痛を紛らすための方法を求めるに常に焦って悶えていた。文学もかつてその排悶手段の一つであったが、文学では終に紛らし切れなくな・・・ 内田魯庵 「二葉亭四迷」
・・・それからその方法をだんだん続けまして二十歳のときに伯父さんの家を辞した。そのときには三、四俵の米を持っておった。それから仕上げた人であります。それでこの人の生涯を初めから終りまで見ますと、「この宇宙というものは実に神様……神様とはいいませぬ・・・ 内村鑑三 「後世への最大遺物」
・・・ それからは、おじいさんは、自分のバイオリンを少年に貸して、弾く方法を教えてやりました。 松蔵は、おじいさんから、バイオリンを教わることをどんなにうれしく思ったでしょう。そして、毎日、日暮れ方になると、城跡にいって、いつもおじいさん・・・ 小川未明 「海のかなた」
・・・嘘でなきゃあ誰も子供のころの話なんか聞くものかという気持だったから、自然相手の仁を見た下司っぽい語り口になったわけ、しかし、そんな語り口でしか私には自分をいたわる方法がなかったと、言えば言えないこともない。こんな風に語ったのです。「……・・・ 織田作之助 「アド・バルーン」
・・・おろして、「それでね、実は、君に一寸相談を願いたいと思って来たんだがね、どんなもんだろう、どうしても今夜の七時限り引払わないと畳建具を引揚げて家を釘附けにするというんだがね、何とか二三日延期させる方法が無いもんだろうか。僕一人だとまた何・・・ 葛西善蔵 「子をつれて」
・・・「シラノが月へ行く方法を並べたてるところがありますね。これはその今一つの方法ですよ。でも、ジュール・ラフォルグの詩にあるように哀れなるかな、イカルスが幾人も来ては落っこちる。 私も何遍やってもおっこちるんですよ」 そ・・・ 梶井基次郎 「Kの昇天」
出典:青空文庫