-
・・・弾丸のあたった腰は、火がついたように疼きほてついていた。「チッ! しようがないね。貴様ら、呉と郭と二人で、それじゃ夜明に出かけろ、今度はうまくやらないと荷物を没収されちゃ、怺えせんぞ!」「ああで」 荷物を積んだ橇は、門から厩の脇・・・
黒島伝治
「国境」
-
・・・日影が縁へ半分ほど差しこんで顔がほて/\するのは風呂に入ったせいであろう。姉上が数々の子供をつれて来る。一同座敷の片側へ一列にならんで順々拝が始まる。自分も縁側へ出て新しく水を入れた手水鉢で手洗い口すすいで霊前にぬかずき、わが名を申上げて拍・・・
寺田寅彦
「祭」