・・・「あんたも将棋指しなら、あんまり阿呆な将棋さしなはんなや」と言い残した。「よっしゃ、判った」と坂田は発奮して、関根名人を指込むくらいの将棋指しになり、大阪名人を自称したが、この名人自称問題がもつれて、坂田は対局を遠ざかった。が、昭和十二年、・・・ 織田作之助 「可能性の文学」
・・・「おっちゃん、うちも中イ入れて」 と、寄って来た。「よっしゃ、はいりイ。寒いのンか。さア、はいりイ」「おおけに、ああ、温いわ。――おっちゃん、うちおなかペコペコや」「おっさんもペコペコや。パン食べよか」「おっちゃん、・・・ 織田作之助 「昨日・今日・明日」
・・・「あはは……。ぜんざい屋になったね」「一杯五円、甘おまっせ。食べて行っとくれやす」「よっしゃ」「どないだ、おいしおますか。よそと較べてどないだ? 一杯五円で値打おますか」「ある。甘いよ」 しかし砂糖の味ではなかった。・・・ 織田作之助 「神経」
・・・それをそんな風に金貸したろかと言いふらし、また、頼まれると、めったにいやとはいわず、即座によっしゃと安請合いするのは、たぶん底抜けのお人善しだったせいもあるだろうが、一つには、至極のんきなたちで、たやすく金策できるように思い込んでしまうから・・・ 織田作之助 「天衣無縫」
・・・と待てしばしがなく、「よっしゃ、今揚げたアるぜ」というものの擂鉢の底をごしごしやるだけで、水洟の落ちたのも気付かなかった。 種吉では話にならぬから素通りして路地の奥へ行き種吉の女房に掛け合うと、女房のお辰は種吉とは大分違って、借金取の動・・・ 織田作之助 「夫婦善哉」
出典:青空文庫