・・・それには、アルファベットとアラビア数字がきれぎれに、一字一字、全部で三十字ほど折れ釘のように並んでいた。クヅネツォフは、対岸の、北の村に住んでいる富農だ。パン粉を買い占めたり、チーズを買い占めたり、そして、それを労働者に高くで売りつける。そ・・・ 黒島伝治 「国境」
・・・ それが、今度はアルファベットになった。なお十三日延ばされたのだ。十三日に十三日を加えてABCの数だけねなければ浦潮へ出て行かれない。 その理由は何か?――列車の都合というのに過ぎなかった。それ以上は兵士には分らなかった。 負傷・・・ 黒島伝治 「氷河」
・・・発信機の方はピアノの鍵盤のようなものにアルファベットが書いてあって、それで通信文をたたいて行くと受信機の方ではタイプライターが働いて紙テープの上にその文句をそっくりそのままに印刷して行く仕掛けである。この機械の主要な部分は発信機と受信機と両・・・ 寺田寅彦 「変った話」
・・・ 昔の詩人ルクレチウスは、物質の原子はちょうどアルファベットのようなもので、種々な言語が有限なアルファベットの組み合わせによって生ずるごとく、各種の物質がこれら原子の各種の組み合わせによって生ずると書き残したが、この考えは近世になって化・・・ 寺田寅彦 「比較言語学における統計的研究法の可能性について」
・・・この四つのアルファベットの組み合わせ自身に何かしら不快な暗示を含んでいるのか、それともいちばん初めに聞かされた音の不快な印象が、この音を聞くたびに新しく呼び返されるのかもしれない。 オーケストラも聞いたが、楽器の音色というものが少しも現・・・ 寺田寅彦 「路傍の草」
・・・であり、改革された土地に対する新しい自分たちの権利について署名したのが、自分の姓名のかきはじめだというような事情は、ロシヤの人民が文盲撲滅運動でピオニェールからアルファベットをおそわった頃、まずおぼえたのが、「ソヴェト」という字であったこと・・・ 宮本百合子 「新しい抵抗について」
・・・工場の中、兵営の中、農村、町、ソヴェトの中、教会の中をもいとわず、共産青年同盟員やピオニェールが、アルファベットのカードをこしらえて、七十の爺さんや二十五のお神さんに字を教えはじめた。 それでも、一九二六年には五千七十七万千九百九十七人・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」
出典:青空文庫