・・・ このような大蛇と虎の闘争が実際にしばしばジャングルの中で自然的に行なわれるか、どうか、少し疑わしく思われる。自然界に闘争の行なわれる場合は、どちらかがどちらかを倒して食ってしまうか、さなくば双方が死んでしまわなければ始末がつかないよう・・・ 寺田寅彦 「映画「マルガ」に現われた動物の闘争」
・・・その軍隊が壊滅した時、軍隊は同じその残虐さで数十万の人々をジャングルや山嶽の間にすてて餓死させ、白骨としました。 アジアの姉妹たちよ。そして日本の女性たちよ。アジアの地図の大半の土地からは、わたしたちが愛した者の最期のうめきがつたわって・・・ 宮本百合子 「新しいアジアのために」
・・・は犬や狼を描いた文学作品の出色のものであるし、キプリングの「ジャングル・ブック」もなかなか豊かな動物と人間の絵巻をひろげている。ハドソンの「ラプラタの博物学者」は、野生鳥類の生彩に溢れた観察、記述で感銘ふかいものである。「日本の鳥」は中西悟・・・ 宮本百合子 「科学の常識のため」
・・・どんな母が、妻が、そして愛人たちが、またふたたび愛する息子、大事な父親、将来の夫を、どこか知れない山の奥、ジャングルの泥沼に死なせてよいと思っているでしょう。 戦争というものは、平和を愛し、勤勉に働いて家庭生活を愛している人民の一生を、・・・ 宮本百合子 「国際婦人デーへのメッセージ」
・・・嬉しくなって、何でも揃えようと頑張っています。ジャングルへ迷い込んだっきりになるものが少くなく、それ等は磁石も天体測量も出来ず、ましてそれを食べるかつ節なんかは持ち合せない気の毒な場合が多数だそうです。隆治さんはああいういい子で、勇気もあり・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・近々シンクレアの『ジャングル』を入れます。 九月十三日 〔市ヶ谷刑務所の顕治宛 駒込林町より〕 第十二信 九月十三日 日曜日午後 ああ、あしたは日曜日であると思う。そして、今朝、起きるとすぐ食堂へ下りて行って来信のところ・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・しかし、どんな孤高の人が、輸送船の中へカタメテつみこまれなかったろうか。ジャングルの中にカタメテすてられた部隊から、一人はなれた人の飢餓と苦悩の運命の終焉が、カタマって餓死した人々の運命とその本質においてどうちがったろう? 最悪の運命の瞬間・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・日本資本主義独得のひねくれ、欺瞞と粗野、卑屈のジャングルをかきわけて、明るい世界の心をわけもたずには自分を生存しているものとして感じられなくなっているきょうの日本の真面目な人々の理性と心情に、「一九一四年夏」を生きたジャックは何を語るだろう・・・ 宮本百合子 「脈々として」
・・・ イギリスの作家キプリングに有名な「ジャングル・ブック」という作品がある。動物の世界の物語であるが、この短篇集の中に若い雄の白海豹ルカンノンの物語がある。北極光の照らす深い北海の年々の集合所から真白い一匹の雄海豹のルカンノンが自分の・・・ 宮本百合子 「山の彼方は」
出典:青空文庫