・・・静かな田舎で地味な教師をして、トルストイやドストエフスキーやロマン・ローランを読んだりセザンヌや親鸞の研究をしたり、生徒に化学などを授けると同時に図画を教えたり、時には知人の肖像をかいてやったりするような生活は、おそらく亮が昔から望んでいた・・・ 寺田寅彦 「亮の追憶」
・・・そのとき、フランスからロマン・ロラン、バルビュス、マルローその他の作家が招待された。招待された作家たちの全部が出席することは出来なかったらしいけれども、この大会が与えた文化の守りについての深い感動と認識にたって、翌る年の一九三五年六月にパリ・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十一巻)」
好きな物語の好きな女主人公は一人ならずあるが、今興味をもっているのは、ロマン・ローランの長篇小説 The Soul Enchantedの女主人公アンネットです。この小説はジャン・クリストフのように、アンネットという女性の一・・・ 宮本百合子 「アンネット」
・・・などは直接青年の自己確立の過程、人間の目ざめの若々しくゆたかな苦悩を描いている。ロマン・ローランの「ジャン・クリストフ」もそういう文学として世界にあまり類のない作品である。ルナールの「にんじん」の主人公は少年であるけれども、どうしてあの小説・・・ 宮本百合子 「生きつつある自意識」
・・・バルザックが、今日いう意味ではリアリストでなかったのだし、彼のロマンチシズムがその時代の必然によって、リアリズムを既に内包していたこと、その二つの矛盾が作品のすべてに実に顕著に顕れていること、従って、林氏亀井氏保田与重郎氏の云う日本ロマン派・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・ 浪曼派の主張は、その名にふさわしいロマンティックな張りと文章の綾と快き吐息までを添えて、途方にくれた心の多くの面を撫でたのであったが、青年のニヒリズムを超剋しようとして自我と主観の飛躍を期したこの声も、ロマンチシズムすべてに同情を示し・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・ 鴎外は漱石とまたちがい、この文学者のドイツ・ロマン派の教養や医者としての教養や、政府の大官としての処世上の教養やらは、漱石より一層彼の人間性率直さを被うた。彼が最後の時期まで博物館長として、上流的高官生活を送ったことは、彼に語らせれば・・・ 宮本百合子 「作家と教養の諸相」
・・・ ロマン・ローランは嘗て、人間の幸、不幸の差というものの多くは社会的条件の変化によって無くすることの出来るものであるが、最も後までのこる差別は恐らく健康人と病人との間に在る差別であろうという感想を小説の中で述べていた。それを読んだ時余程・・・ 宮本百合子 「昨今の話題を」
・・・ ロマン・ローランは、人間の社会にのこされる最後の不公平は、健康と病とであると云っているけれども、女はその最後の不幸の中にもう一つ女であるということからの不幸の匣を蔵していることは、私たちを沈思させる事実だと思う。 人々は、結婚につ・・・ 宮本百合子 「『静かなる愛』と『諸国の天女』」
・・・以前ロマン・ローランの「ジャン・クリストフ」を読んでかなり感心したことがありました。そしてまた今、「マソー・レンチャンテッド」を読んでおりますが、まだほんの初めですから、はっきりしたことはいわれませんが、私はこの作者の見方や、感じ方について・・・ 宮本百合子 「十年の思い出」
出典:青空文庫