・・・一事一物を画き添えざるも絵となるべき点において、蕪村の句は蕪村以前の句よりもさらに客観的なり。人事的美 天然は簡単なり。人事は複雑なり。天然は沈黙し人事は活動す。簡単なるものにつきて美を求むるは易く、複雑なるものは難し。沈黙・・・ 正岡子規 「俳人蕪村」
・・・――そしてわれわれの見るところでは この二つの思想は彼にとって同一物なのである。p.271○ドストイェフスキーの神は、肯定と否定とを同時にもつ対立の始祖であり、従って不安の原理だからである。p.272○彼は神を安静として夢みたのに、・・・ 宮本百合子 「ツワイク「三人の巨匠」」
・・・小林氏の感受した美が氏の描いた情趣と同一物であるならば、自分の言うごとき区別は立てられないかもしれない。が、事実問題として、ああいう美しさが六月の太陽に照らされたほの暑い農村の美しさのすべてであるとは言えないであろう。小林氏にしてもあれ以外・・・ 和辻哲郎 「院展日本画所感」
出典:青空文庫