・・・正元元年より二年にかけては大疫病流行し、「四季に亙つて已まず、万民既に大半に超えて死を招き了んぬ。日蓮世間の体を見て、粗一切経を勘ふるに、道理文証之を得了んぬ。終に止むなく勘文一通を造りなして、其の名を立正安国論と号す。文応元年七月十六日、・・・ 倉田百三 「学生と先哲」
・・・蒼ざめた、カリギュラ王は、その臣下の手に依って弑せられるところとなり、彼には世嗣は無く全く孤独の身の上だったし、この後、誰が位にのぼるのか、群臣万民ふるえるほどの興奮を以て私議し合っていた。後継は、さだめられた。カリギュラの叔父、クロオジヤ・・・ 太宰治 「古典風」
・・・又国内思想指導の方針としては、較もすれば党派的に陥る全体主義ではなくして、何処までも公明正大なる君民一体、万民翼賛の皇道でなければならない。 以上は私が国策研究会の求に応じて、世界新秩序の問題について話した所の趣旨である。各国家・・・ 西田幾多郎 「世界新秩序の原理」
・・・すなわち安なりといえども、その安は身外の事物、我に向って愉快を呈するに非ず。外の事物の性質にかかわらずして、我が心身にこれを愉快なりと思うものにすぎず。すなわち万民安堵、腹を鼓して足るを知ることなれども、その足るを知るとは、他なし、足らざる・・・ 福沢諭吉 「教育の目的」
・・・続いてその三年目は、逝けるレフ・トルストイが目醒めないながらも熾烈に働く人間精神の欲求によってさぐり求めていた万民の幸福への、至難多岐な第一歩がロシア全土に於て踏み出された年である。 父を理解しない当時の国家の権力までをつかって、財産を・・・ 宮本百合子 「ジャンの物語」
・・・ 政治の本来は自ら自らを治める力と方法との自覚の謂であろうし、万民翼賛の思想にしろその本質に立つものと思うが、たとえば女子の高等程度の学校で、女生徒たちは昨今何かの自主的な活動に訓練されているのであろうか。 学校の寄宿舎生の間に、自・・・ 宮本百合子 「女性の歴史の七十四年」
・・・京都には、かつてわが国を無階級で自由な一国に統一して合理的な政治によって万民をうるおした聖天子の末裔があらせられる。そのむかしの自由な日本はこの聖天子を幕府とおきかえることによって再生する。」この一文をよむわれらの脳裏に愛郷塾が髣髴し、社会・・・ 宮本百合子 「文学に関する感想」
・・・ろは、個々それぞれの作品であり、個々のそれぞれの作品はとりも直さず日本の農村の生活が生きる姿で描き出されている制作であるし、いろいろの職場で働いている人々、或いは働く職場の失われた人々の物語でさえも、万民の生き経る波瀾への共通な愛から評価さ・・・ 宮本百合子 「文学は常に具体的」
・・・けれども、どういうのが国民文学であるかという点になって来ると、各人各説であって、ともかくそれは現実を超えた文学でなくてはなるまい、という説或は偽せものから本ものを見わける文学という論があり、或は万民の心をつかむ文学を、という要望も国民文学の・・・ 宮本百合子 「平坦ならぬ道」
・・・のことを話していたその女のひとの生活の中でも、主婦としての毎日の目にはマッチのないこと、木炭や米のないことは、そのままでの姿で見えているのだと思える。万民協力、この難局を突破しなければならないことは自明でありますが、それには従来の秘密主義で・・・ 宮本百合子 「待呆け議会風景」
出典:青空文庫