・・・自分一人の気に任せて不自由なく、病気も一身の病気にして他人の病を憂うるに及ばざるに、ただ夫婦の約束したるがために、あたかも一生の苦労を二重にしたる姿となり、一人にして二人前の勤めを勤むるの責に当たるは不利益なるが如くなれども、およそ人間世界・・・ 福沢諭吉 「日本男子論」
・・・一体なぜ、ジイドによって食人鬼のように描かれている官僚どもは世界の眼前にこうやって平然と否堂々と自分たちにとって不利益な材料である筈の生産力の弱点や、計画の実践力における弱さ等をあけひろげてみせているのであろうか、と。 それは改善されな・・・ 宮本百合子 「こわれた鏡」
・・・私はいつもただ私の考えているだけのことをいうのみではなく、またあるいは私を滑稽に見せるかもしれず私の不利益となるかもしれぬことをかくそうと思ったことはなかった。」 若いマリアにとって日記を書く最後となったこの一八八四年の五月一日午後は、・・・ 宮本百合子 「マリア・バシュキルツェフの日記」
出典:青空文庫