・・・ヨーロッパの封建時代、中世にはいろいろな騎士物語がある。騎士物語が近代小説の濫觴となっているのだが、なかで有名なランスロットを主人公とした長い物語がある。その中に美しい孤独のシャロットの姫君が登場する。テニスンが物語っているとおり古い城の塔・・・ 宮本百合子 「衣服と婦人の生活」
・・・ さらに、世の中が進みまして、中世の、騎士道の時代。騎士道と申しますのは、女の人に大変親切にする、強い者を挫き、弱い者をかばい助けるという精神によって貫かれたひとつの道徳でありますが、あなた方も、もし、そういうふうに、女の人に大変親切に・・・ 宮本百合子 「幸福について」
・・・たとえば中世の人間は地球はひらったい台のようなもので、その両端には地獄があると考えていた。地獄へおちる恐怖という宗教からの恐怖と、科学の未発達からおこった未知の世界への暗い恐怖という動物的な恐怖とを一つにして、地のはてというものに対する恐怖・・・ 宮本百合子 「幸福の感覚」
・・・能の、動きの節約そのものの性質のなかには、明らかに日本の中世の社会生活からもたらされた被虐性、情感の表現を内へ追い込む性格が作用していて、しかも、ぎりぎりまで剪りこまれた外面へのあらわれの裡に、精神と情緒のほとばしる極限を表現しようとする芸・・・ 宮本百合子 「今日の生活と文化の問題」
・・・見落されてはならず、日本におけるヒューマニズムの伝統の乏しさは、この点に関しても今日の日本のヒューマニストが、西欧のルネッサンス時代のヒューマニストが、中世紀宗教の重圧をはねかえして、人間精神と肉体との自由であった古代ギリシア文化の復興を叫・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・ルネッサンスは中世の思想と社会が人間に強制していた種々の軛からの人間性の解放を叫んで、社会文化の各方面に驚くべき躍進を遂げた時代であった。 降って十八世紀の西欧に於ける人文主義も封建の封鎖に対して人間性の明智と合理とを主張した広義のヒュ・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・そして、フランス、イギリス、ドイツと全ヨーロッパに拡がって、それまでの中世的な暗い王権と宗教との圧迫から、自由にのびのびと人間性を解放しようとする運動となり、社会生活と文化は全面的にヨーロッパの近代への扉をひらきはじめた時代であった。 ・・・ 宮本百合子 「女性の歴史」
・・・錬金術が背後の楯としていた中世の宗教の暗い恐怖すべき力と向いあって、しばしばその恐怖に圧倒されそうになる自分ともたたかいながら、錬金術への疑問を、現実があらわす客観的な真理にしたがって謙遜に解きにかかって、おそらくは目立たぬ生涯を硫黄くさい・・・ 宮本百合子 「生活者としての成長」
・・・ 日本のようについさきごろまで中世的絶対主義が支配していた国、ファシズムに対抗する人民の自主的結集のなかった国柄のところでは、今日、再燃するファシズムとバランス上からも、レフティストの存在は必要である。このことを一般は現実問題として理解・・・ 宮本百合子 「世紀の「分別」」
・・・という生きかたをしたのでもなく、侵略者の暴力で臨んだのでもなく、これら数百万のソヴェト市民ははっきりその眼、その心で、自分たちの建設しつつある社会主義社会の生活面を、旧世界の中世封建の霧がかかった中部ヨーロッパ諸国の人民生活と対比しないでは・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
出典:青空文庫