・・・こういう社会的労作を現すのに或る子供は文章を書く、或る子供は作文が出来ないから絵で画く、また或る子供は雑誌を見たところがそこに出ていた絵が大変面白いと思ったからそれを切抜いて帳面へ貼ってわきへ唱歌を書いてこれを表現するという風にする。だから・・・ 宮本百合子 「ソヴェト・ロシアの素顔」
・・・やはり文学がすきで、作文のなかに漱石もどきに、菫ほどの小さき人云々と書いたりしていた高嶺さん。ショルツについて分教場でピアノを勉強していたこの友達は、独特なシントーイストの妻となって、小説を書く女とのつき合いなどは良人であるひとからとめられ・・・ 宮本百合子 「なつかしい仲間」
・・・十歳のとき発病して、小学校の尋常四年までしかいかなかった松山くにというその少女は、入園したときからもう病状が軽くなくて、あまり運動などもできず、いつも机に向って本をよんだり、作文をかいたりしていた。その作文は、療養所の発刊している『南風』に・・・ 宮本百合子 「病菌とたたかう人々」
・・・ 稽古も終りかけで、応用作文を藍子が帳面へ書いていると、「ごめん下さい」 神さんが上って来た。そして体を半分階子口の板の間へ置いたまま畳へ片手をつき、ずっと尾世川の方へ一枚のハガキをさし出し降りて行った。「――何だかうまく行・・・ 宮本百合子 「帆」
・・・ 母が読書好きであった関係から、家の古びた大本箱に茶色表紙の国民文庫が何冊もあって、私は一方で少女世界の当選作文を熱心に読みながら、ろくに訳も分らず竹取物語、平家物語、方丈記、近松、西鶴の作品、雨月物語などを盛によんだ。与謝野晶子さんの・・・ 宮本百合子 「行方不明の処女作」
出典:青空文庫