・・・私に肝要なものは、余生を保障するような金よりも強い足腰の骨であった。 大きくなった子供らと一緒に働くことの新しいよろこび、その考えはどうにか男親の手一つで四人のちいさなものを育てて来た私にふさわしく思われた。私は自分の身につけるよりも、・・・ 島崎藤村 「分配」
・・・それで、国家なり個人なりが一人の学者に生活の保障と豊富な研究費を与えてくれて、そうして好きな事を勝手に研究させてくれればこれほど結構なことはないが、そういう理想的な場合が事実上存在するかどうかを考えてみる。 ちょっと考えると、大学教授な・・・ 寺田寅彦 「学問の自由」
・・・これらの若い人たちが自分たちの歴史の発展のいちばん確かな道として踏みしめてゆこうとしているのは、真実のある、男女がお互いに正直に協力し幸福に生きてゆく可能の保障された新しい社会関係をうちたててゆく道である。ほんとうに新しい人間らしい仕組みの・・・ 宮本百合子 「明日をつくる力」
・・・世界の平和の確保のうちにめいめいの家庭の平和の保障が存在することを実感する主婦の感情こそ、日本の未来を明るく支える文化の感覚である。権力を失うまいとするものが、どんなに卑しく膝をかがめて港々に出ばろうとも、着実真摯な男女市民の人生は、個人と・・・ 宮本百合子 「偽りのない文化を」
・・・ 本当にわたくしたちが社会で働き得ること、その働きによって、衣食住が保障されること、こういう生存の必要条件が合理的に保証されていなければ、最も長い時間裁縫工場で働かなければならない婦人が、着るに着られず生活しなければならない矛盾は解決さ・・・ 宮本百合子 「衣服と婦人の生活」
・・・原因と結果とは互に作用しあっているから、もしもすべての女性が妻であり母であることによって、いよいよ勤労生活に安定が保障されているような社会ならば、したがって、太い潮が細々とした流れを吸いあげてしまうような金づまりだの、手にもっている御飯の茶・・・ 宮本百合子 「権力の悲劇」
・・・となる危険から保障されていると云えるものはない。一つの民族の社会と文学の健全にとっては、少数の西欧文学精神のうけつぎてが、自国の文学について劣等感に支配されつつ、翻訳文学であるならば、つとめてその優性をひき出すとしても、多くプラスするところ・・・ 宮本百合子 「心に疼く欲求がある」
・・・ 女性の名誉と、経済的保障の為に制定された離婚訴訟に関する権利を、如何程の深い、価値ある態度で運用して居りますでしょうか。離婚後の扶助料を以て暗々裡に良人を威嚇しつつ同棲生活を続ける夫人連や、利己的の恥ずべき動機から離婚訴訟を起して、良・・・ 宮本百合子 「C先生への手紙」
・・・る、姙娠すればちゃんと四ヵ月手当がついて休暇も貰える、娘が結婚すればそれだけの条件もつき、社会的にそういう保護をされているから、安心して働くことが出来、よく働くことが、とりも直さず社会的な安全と幸福の保障になります。ここに、人民の民主主義社・・・ 宮本百合子 「社会と人間の成長」
・・・ 日本のファシズムが露骨に言論統制をはじめ、文化抑制を強行し、文学者の存在権は文学上の業績ではなくて軍御用の程度によって保障されるようになって行ったとき、ファシストでない大多数の人々は、もちろんその軍部の乱暴を感じていた。無知、野蛮な専・・・ 宮本百合子 「世紀の「分別」」
出典:青空文庫