・・・ 性の欲求、恋愛は人間の本性上、ことに男子にとっては、自由を欲するものであって、それはまた生活精力上、審美上、優生学上の機微とからまり、自然の不思議な意志が織りこまれているものである。この天然と生命との機微を無視するキリスト教的、人道主・・・ 倉田百三 「愛の問題(夫婦愛)」
・・・元来子孫の維持と優生という男女協同の任務の遂行が、女子に特別な負荷を要求する以上、男子が女子を保護しなければならないのは当然のことである。しかるに今日においては国法は男子の利益においてきめられ社会は母性と、産児と、未亡人とを保護しない。妊娠・・・ 倉田百三 「婦人と職業」
・・・ 以上のような進化論的災難観とは少しばかり見地をかえた優生学的災難論といったようなものもできるかもしれない。災難を予知したり、あるいはいつ災難が来てもいいように防備のできているような種類の人間だけが災難を生き残り、そういう「ノア」の子孫・・・ 寺田寅彦 「災難雑考」
・・・ただもし非常な空想をたくましくすることを許されるとすれば、自分はここにも何か遺伝学的、優生学的、生理学的な説明が試み得られそうな気がする。ただ気がするだけでまだ具体的な材料を収集することができない。 それはとにかく、年を取るに従っていろ・・・ 寺田寅彦 「自由画稿」
・・・ 今日の結婚論は、先ず優生学の見地から、子供をもつ可能の点からいわれている。より強壮な肉体の配偶を互に選び合えということに重点をおいて語られている。 これらのことは、結婚の現実に幸福をましてゆく一つの大切な条件であるし、日本の女性た・・・ 宮本百合子 「結婚論の性格」
・・・ 優生学、ユーゼニックスは非常に社会的問題として注意深く扱われている。第一ソヴェトは昔から肺病の率が非常に多い。それから性病患者も勿論あって、そういうものに対して優生学から子供を、次の時代を改善して行くということは非常に熱心にやっている・・・ 宮本百合子 「ソヴェト・ロシアの素顔」
・・・後の方の例を滅薙せんとする法規を改正し得ても、前者のような芽生の優生学上から見てのくされを如何ともなし難いところに、戦勝談からはもれている現実の力つよい示唆が潜んでいることを感じるのである。 近頃婦人ばかりの名を連ねて結成された二つ・・・ 宮本百合子 「花のたより」
・・・今日、産児制限は、優生学の立場からというよりは、むしろ民族の屈辱の一つとして、自主の策は何一つもたない今日の権力に対する母性の憤りの一つの対象としてあらわれているとさえいえる。 離婚の自由が婦人にも認められ、民法はそれと同時に、離婚した・・・ 宮本百合子 「離婚について」
・・・結婚風俗史。一夫一婦論。妾。婦人と政治。婦人の国際的保護。妻の所得の保護。ソヴェトの婚姻法。フランスにおける内縁問題。結婚優生学。これらの各項をそれぞれの専門家が執筆している。第二巻法律篇は、婚姻法概論からはじまって、妻の無能力。内縁。国際・・・ 宮本百合子 「若い婦人のための書棚」
出典:青空文庫