・・・一九四六年に用紙割当事務の内閣移管が行われたとき、政府は日本出版協会の公的存在を認めること、言論出版の自由を認めることを条件とした。ところが行政機構の変革をチャンスとして政府は従来の用紙割当委員会さえも無視して、ただ一人の長官が決定権をもつ・・・ 宮本百合子 「今日の日本の文化問題」
先ごろ、ある婦人雑誌で、婦人の公的生活、私的生活という話題で、座談会を催す計画があったようにきいた。何かの都合で、それは実現されなかった。しかし、その話をきいたとき、わたしは、それは面白い話題のつかみかただと思った。提案者・・・ 宮本百合子 「逆立ちの公・私」
・・・あくまで個人の性格や事情と公的なものと観念化されていた一つの想念とを対立させて、そこで敗れた人間性や良心の課題の範囲で扱われたことも、日本の知識人の歴史の性格を雄弁に語っていることであった。しかも、当時一般の心理は、このような歴史的文学の題・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・今日、大多数の若い人々が、男女にかかわらずそれぞれの恋愛について、私的なことであるが又公的なことでもあるとする一つの公開的態度をもって対する根本には、上述のように、恋愛の含む広い複雑な社会性の意識がいつとなく作用しているからである。 若・・・ 宮本百合子 「成長意慾としての恋愛」
・・・ 今日になってかえりみれば、同盟の先輩たちが当時そのような無批評の状態におちいっていたのには、さまざまの複雑な私的公的のもつれ合った心理的な理由もあったことが私にも分るのであるがその当時は合点が行かなかった。 読者である大衆に対して・・・ 宮本百合子 「近頃の感想」
・・・ついては、本人が出席していないところで、責任ある人によって公的に発言されたことが事実をあやまっていることは迷惑ですから、この機会に簡単にわたしの事実を明白にいたします。 本部の会議の席上いわれた書記長の発言を要約すると大体左の諸点の・・・ 宮本百合子 「文学について」
・・・私の公的処女作というべきその「貧しき人々の群」の中には、ところどころで作者がやみ難い人道主義的感激を「子供等よ!」という農民への呼びかけで表現している。また「わが兄弟」という言葉でも呼んでいる。それは、まさしく当時の私の心魂をつかんで燃え立・・・ 宮本百合子 「行方不明の処女作」
出典:青空文庫