・・・どうせ二三年なのだから、と粗悪な条件のまま交代させているのだけれど、先頃婦人工場監督官谷野せつ氏が公表された統計では、働く女性たちは三年目ぐらいからぐっと体をこわしているのである。 事変になってから乳児の死亡率の高くなったことや若い母の・・・ 宮本百合子 「女性の現実」
・・・その腹稿をやっと三十二年になって公表の時機を見出したということには、それ迄の日本が岸田その他の婦人政客を例外的に生みながらも、全体としては「真面目に女大学論など唱えても」耳を傾ける人のすくない状態におかれていたからにほかならない。 婦人・・・ 宮本百合子 「女性の歴史の七十四年」
・・・一個のマルクシストであり、中央委員であった人物が、残酷な悪法に挫かれて、理性を偽り、これからは共産主義に対してたたかうことを生涯の目的とするという意味の上申書を公表しなければならなかったことは悲劇である。どんなに日本の治安維持法は暴虐で、通・・・ 宮本百合子 「信義について」
・・・しかし、この板橋での出来ごとや強制買上げ案、警視庁の意見の公表の調子などの間には、私たち人民が、ふむ、こんな風か、と読みすごしてはならない、極めて微妙、深刻な、何かの底流が潜んでいるのではなかろうか。 私たち日本の人民は、やっとこのごろ・・・ 宮本百合子 「人民戦線への一歩」
・・・勤労人民の組織的な生活向上のためにそれだけ努力する党が、日本の他のどの既成政党ももたない文化政策の大綱を公表していることも自然である。そして世界の各民主国家が、その民主的進展の歴史的段階に応じて、それぞれの経験と成果とを研究しあい摂取しあう・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
・・・ このあいだ政府はインフレの物価騰貴につれて最低賃銀の基底を公表した。若い人々はあれをみて何を感じたであろうか。男子三十歳から五十歳が最低四百五十円といわれている。では二十八歳の青年、二十五歳の者、二十二歳の者、その人々の労働の報酬はど・・・ 宮本百合子 「青年の生きる道」
・・・十八年度最終の出版整備が公表されて程なくのことである。 今日の本やの気分というものを犇と感じつつ見ると「青眉抄」上村松園とある。「おや、珍しい本だこと」「さすがに装幀もようござんすね」そう云ったきり一冊しか出さないのである。・・・ 宮本百合子 「「青眉抄」について」
・・・ 徳永直は、過去の著作の絶版を新聞に公表した。 話によると、徳永直という名をすてる。そして通俗小説を書く。再び情勢が好くなっても決して舞い戻らないという決心をもって間宮氏に相談をもちかけた由。そう迄決心したら其もよかろうと云ったら、・・・ 宮本百合子 「一九三七年十二月二十七日の警保局図書課のジャーナリストとの懇談会の結果」
・・・といういわゆる上申書の内容を公表した。「私は実は十一月四日の第一回公判廷において、自分がどの線でゆくのが真実なのか、非常に悩みました。自分が無罪なのか。単独か、共同かという三つのどれもが記憶において錯綜していたからです。」 読者に奇・・・ 宮本百合子 「それに偽りがないならば」
・・・の告発状の中には、検察当局がその作品をちゃんとよんでいない節があることを公表するだろう。ヒダにはさまれてもがくどの虫も、権力によって発せられた告発状そのものが、訴訟法に反してつくられているという事実をもって、法廷にたたかう決意を示したためし・・・ 宮本百合子 「人間性・政治・文学(1)」
出典:青空文庫