・・・こういう意味において、私は個人主義だと公言して憚らないつもりです。 この個人主義という意味に誤解があってはいけません。ことにあなたがたのようなお若い人に対して誤解を吹き込んでは私がすみませんから、その辺はよくご注意を願っておきます。時間・・・ 夏目漱石 「私の個人主義」
・・・ もとより高尚なる理論上よりいえば、位階勲章の如き、まことに俗中の俗なるものにして、歯牙にとどむべきに非ずというといえども、これはただ学者普通の公言にして、その実は必ずしも然らず。真実に脱俗して栄華の外に逍遥し、天下の高処におりて天下の・・・ 福沢諭吉 「学問の独立」
・・・啻に白頭の故老のみならず、青年以上有為の士人中にも、一切万事有形も無形も文明主義の一以て之を貫くと敢て公言して又実際に之を実行しながら、独り男女両性の関係に就ては旧儒教流の陋醜を利用して、自から婬猥不倫の罪を免れんとする者あるこそ可笑しけれ・・・ 福沢諭吉 「新女大学」
・・・故にかの西洋家流が欧米の著書・新聞紙など読みてその陰所の醜を探り、ややもすればこれを公言して、以て冥々の間に自家の醜を瞞着せんとするが如き工風を運らすも、到底我輩の筆鋒を遁るるに路なきものと知るべし。 日本男子の内行不取締は、その実にお・・・ 福沢諭吉 「日本男子論」
・・・なおはなはだしきは、医は意なりと公言して、医術は憶測に出ずるものかと誤まり認め、無稽の漢薬を服して自得する者あり。その愚の極度にいたりては、売薬をなめて万病を医せんと欲する者あり。上等社会にしてその知識の卑しきこと、実に驚くに堪えたり。・・・ 福沢諭吉 「物理学の要用」
・・・作家石川達三は、文学者の戦争協力についての責任が追及されたとき、日本がもしふたたびあやまちを犯すことがあれば、自分もまたあやまちを犯すだろうと公言した作家であった。石川達三という人のこころのなかで、そのことばとこのことばとのあいだには、どう・・・ 宮本百合子 「新しい潮」
・・・というふうに感じられそれを公言することが流行となり、ヒューマニズムという旗は、無軌道な人間感情の氾濫という安易な線に沿ってひらめいたのでありました。日本の近代精神において、ヒューマニズムがいわれる場合、ほとんど常に、それが感性的な面のみの跳・・・ 宮本百合子 「一九四六年の文壇」
・・・会則、綱領がないと公言されていることは、一人の男が、私に主義というものはありませんと告白したと同様本来この上なく危っかしいことなのである。別な言葉でいえば、その時々の風の吹きまわしに吹きまわされることをみずから語っているのである。アカデミッ・・・ 宮本百合子 「近頃の話題」
・・・ 宣教師の娘であり、宣教師の妻であって、バックが、中国の民族的自立の必然を認め、中国の民衆の独自性を理解して中国にキリスト教と宣教師とは必要ないものであると公言していることは、実に一つの驚くべき人間的誠実である。彼女はこれらのものの性質・・・ 宮本百合子 「中国に於ける二人のアメリカ婦人」
・・・ ロシアは矛盾なく 公言される信条である。「人はロシアを理性をもってではなく、信仰をもって理解しなければならぬ」p.281○狂妄な帝国主義は驕傲を僧衣に包んで「神の御意なり」と叫ぶのである。○先ずもってわれわれヨーロッパの世界は、こ・・・ 宮本百合子 「ツワイク「三人の巨匠」」
出典:青空文庫