・・・そのうちに海軍の兵曹上りの男が宵のうちから卵塔場に張りこんでいて、とうとう幽霊を見とどけたんですがね。とっつかまえて見りゃ何のことはない。ただそのながらみ取りと夫婦約束をしていたこの町の達磨茶屋の女だったんです。それでも一時は火が燃えるの人・・・ 芥川竜之介 「海のほとり」
・・・ ――戦死者中福井丸の広瀬中佐および杉野兵曹長の最後はすこぶる壮烈にして、同船の投錨せんとするや、杉野兵曹長は爆発薬を点火するため船艙におりし時、敵の魚形水雷命中したるをもって、ついに戦死せるもののごとく、広瀬中佐は乗員をボートに乗り移・・・ 国木田独歩 「号外」
・・・ 烏の大尉の部下、烏の兵曹長が急いでやってきて、首をちょっと横にかしげて礼をして云いました。「があ、艦長殿、点呼の時間でございます。一同整列して居ります。」「よろしい。本艦は即刻帰隊する。おまえは先に帰ってよろしい。」「承知・・・ 宮沢賢治 「烏の北斗七星」
出典:青空文庫