・・・父ははたして内訌している不平に油をそそぎかけられたように思ったらしい。「寝たければお前寝るがいい」 とすぐ答えたが、それでもすぐ言葉を続けて、「そう、それでは俺しも寝るとしようか」 と投げるように言って、すぐ厠に立って行った・・・ 有島武郎 「親子」
・・・すでに断絶している純粋自然主義との結合を今なお意識しかねていることや、その他すべて今日の我々青年がもっている内訌的、自滅的傾向は、この理想喪失の悲しむべき状態をきわめて明瞭に語っている。――そうしてこれはじつに「時代閉塞」の結果なのである。・・・ 石川啄木 「時代閉塞の現状」
・・・ちょうどそのころに今川氏に内訌が起こり、外からの干渉をも受けそうになっていたのを、この浪人が政治的手腕によってたくみに解決し、その功によって愛鷹山南麓の高国寺城を預かることになった。これがきっかけとなって、北条早雲の関東制覇の仕事が始まった・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
出典:青空文庫