・・・と郷人の蔭口するのを洩れ聞いて発憤して益々力学したという説がある。左に右く天禀の才能に加えて力学衆に超え、早くから頭角を出した。万延元年の生れというは大学に入る時の年齢が足りないために戸籍を作り更えたので実は文久二年であるそうだ。「蛙の説」・・・ 内田魯庵 「鴎外博士の追憶」
・・・もッと不思議な事があるよ、動力学と静力学を君が知ていると、もッと早く分らせることが出来るがネ。早くいッて見れば空漠として広い虚空の中に草の蔓は何故無法に自由自在に勝手に這い回らないのだろう。ソコニハ自然の約束があるから即ち一定の有様をなして・・・ 幸田露伴 「ねじくり博士」
・・・ 物理学の基礎になっている力学の根本に或る弱点のあるという事は早くから認められていた。しかし彼以前の多くの学者にはそれをどうしたらいいかが分らなかった。あるいは大多数の人は因襲的の妥協に馴れて別にどうしようとも思わなかった。力学の教科書・・・ 寺田寅彦 「アインシュタイン」
・・・ ヨーヨーは力学的の玩具である。これの運動の解明は古典力学だけで間に合う。しかしコリントゲームの方には公算的統計的の要素が入り込む。前者では因果の連鎖が一筋の糸でつづいているが、後者では因果の中間に蓋然の霧がかかっている。それで、前者で・・・ 寺田寅彦 「異質触媒作用」
・・・エイゼンシュテインはこれを二つのものの単なる組み合わせあるいは堆積すなわち彼のいわゆる叙事的な原理と見る代わりに、二つのものの衝突の中に観念を生み出し爆発させる力学的原理を認めようとしたようである。しかしわれわれのような観賞者の立場からすれ・・・ 寺田寅彦 「映画芸術」
・・・ 絶えずあとしざりをしているものを追いかけて突くのでは、相対速度の減少のために衝撃が弱められる、これに反して向かって来るのを突くのではそれだけの得がある、という事は力学者を待たずとも見やすい道理であるが、ベーアは明らかにこれを利用して敵・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(3[#「3」はローマ数字、1-13-23])」
・・・ それにはまず物理的力学的な世界像を構成する要素が映画の上にいかなる形で代表されているかを考えてみるのが一つの仕事である。 映画の観客は必ずしも学問としての物理学を学んではいない。しかしすべての人間は、皆無意識に物理的力学的に世界像・・・ 寺田寅彦 「映画の世界像」
・・・の読める人にとっては、アインシュタインの相対性原理の論文でも、ブロイーの波動力学の論文でも、それを読んで一種無上の美しさを感じる人があるのをとがめるわけにはゆかないであろうと思う。ただ事がらが非情の物質と、それに関する抽象的な概念の関係に属・・・ 寺田寅彦 「科学と文学」
・・・古い『フィル・マグ』〔Philosophical Magazine〕の中から「首釣の力学」や「人玉について」などという論文を発見してひどく嬉しがったりしたのもその頃であった。レーノルズの全集をひやかしてこの異彩ある学者を礼讃してみたり、マク・・・ 寺田寅彦 「科学に志す人へ」
・・・ニュートンはまたこのケプレルの作ったものを素材として、さらに偉大な彼の力学体系を建設した。これと同様な例をあげれば限りはないであろう。 三越で陶工の作業を見た帰りの電車の中でこんな空想を起こしてみたが、あとになってもう一ぺん考え直してみ・・・ 寺田寅彦 「空想日録」
出典:青空文庫