・・・ お君位の時には、まだ田舎に居て、東京の、トの字も知らなかったくせに、今ではもうすっかり生粋の江戸っ子ぶって、口の利き様でも、物のあつかい様でもいやに、さばけた様な振りをして居る癖に、西の人特有の、勘定高い性質は、年を取る毎にはげしくなっ・・・ 宮本百合子 「栄蔵の死」
・・・そのようないわば勘定高い民主主義者が、文化・文学の領域の問題となるとどうして全線的な観点から計量しようとする熱心をそこなわれるのでしょうか。ここに一人の民主主義作家があって、現にその作品は数万、十数万という広い人々の間に読まれている時、そし・・・ 宮本百合子 「討論に即しての感想」
・・・口先では体裁のよいことをいうが、勘定高いゆえに無慈悲である。また見栄坊であって、何をしても他から非難されまいということが先に立つ。自分の独創を見せたがり、人まねと思われまいという用心にひきずられる。他をまねる場合でも、「人見せ善根」になって・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
出典:青空文庫