・・・入口に近い机の上では、七条君や下村君やその他僕が名を知らない卒業生諸君が、寄附の浴衣やら手ぬぐいやら晒布やら浅草紙やらを、罹災民に分配する準備に忙しい。紺飛白が二人でせっせと晒布をたたんでは手ぬぐいの大きさに截っている。それを、茶の小倉の袴・・・ 芥川竜之介 「水の三日」
・・・そうしてそう着実になっているにかわらず、毎年何百という官私大学卒業生が、その半分は職を得かねて下宿屋にごろごろしているではないか。しかも彼らはまだまだ幸福なほうである。前にもいったごとく、彼らに何十倍、何百倍する多数の青年は、その教育を享け・・・ 石川啄木 「時代閉塞の現状」
・・・ね、竹内君は御存知ですが僕はこう見えても同志社の旧い卒業生なんで、矢張その頃は熱心なアーメンの仲間で、言い換ゆれば大々的馬鈴薯党だったんです!」「君が?」とさも不審そうな顔色で井山がしょぼしょぼ眼を見張った。「何も不思議は無いサ、そ・・・ 国木田独歩 「牛肉と馬鈴薯」
一 給仕人は電気 今春米国モンタナの工科大学で卒業生のために祝宴を開いた時、ボーイの代りに電気を使って御馳走した。一列に並べた食卓の真中に二条のレールを据え付け、この上を御馳走を満・・・ 寺田寅彦 「話の種」
・・・家内は社会の学校なり、社会にありて専制を働く者は、この学校の卒業生なり。故に曰く、社会の有様を改革せんと欲せば、先ずその学校を改革すべきなり。 前条に記したる鬼蛇父母なり、また公務家なり、いやしくも上等社会に列して銭に不自由なき人なれば・・・ 福沢諭吉 「教育の事」
・・・「いいえ、私はエステル工学校の卒業生です。」「エステル工学校。ハッハッハ。素敵だ。さあどうです。一杯やりましょう。チュウリップの光の酒。さあ飲みませんか。」「いや、やりましょう。よう、あなたの健康を祝します。」「よう、ご健康・・・ 宮沢賢治 「チュウリップの幻術」
・・・実は本年は不思議に実業志望が多ございまして、十三人の卒業生中、十二人まで郷里に帰って勤労に従事いたして居ります。ただ一人だけ大谷地大学校の入学試験を受けまして、それがいかにもうまく通りましたので、へい。」 全く私の予想通りでした。 ・・・ 宮沢賢治 「茨海小学校」
・・・そういう学校からの方たちも、あるいは、新しい卒業生としてきょうの会に御出席かもしれません。それを思うと、一層ひとこと御挨拶をしたい心持がして、これをかいております。 みなさまはこの数日来、卒業し、送別会、上級学校の新入生としての歓迎・・・ 宮本百合子 「新しい卒業生の皆さんへ」
・・・ 師範卒業生佐田の安直ぶりが、階級的発展の端緒としての意味をもつ未熟さ、薄弱さとして高みから扱われているのではなく、作者須井自身にとっても弱い一点であることは、「幼き合唱」のところどころの文章にうかがわれる。大体作者はいわゆる筆が立つと・・・ 宮本百合子 「一連の非プロレタリア的作品」
・・・ 一九二七年度の技術学校卒業生を、産別、出身、ロシア共産党所属率とわけて見るとこういう工合だ。 産別 労働者出身率 ロシア共産党及青年同盟への組織率工業 二四・六 二〇・七〃 七二・五 四〇・〇農・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」
出典:青空文庫