・・・ 一八九七年、マリヤは長女のイレーヌを生み、彼女の家庭生活と科学者としての生活は一層複雑に多忙になったけれども、健康なマリヤは、すべての卓抜な女性が希うとおりそれらの生活の全面を愛して生きようとしました。「妻としての愛情も、母としての役・・・ 宮本百合子 「キュリー夫人の命の焔」
・・・ 社会主義的生産にあって、少数の技師だけが卓抜ならいいという事は決して云えない。あらゆる勤労者の技術水準が、去年よりは今年、今年よりは来年と高められなければならない。そのことについてはスターリンも頻りに云っている。「再建設期に於ては・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」
・・・ 劇の第一幕から終りまで、二つの型の対立的争闘が描かれてあるだけで、卓抜で精力的なコムソモールは、反動傾向の中にまじっている浮動的な分子を正しい建設に協力させ獲得するために組織的努力をすることも見落されているし、推移する工場内の情勢がお・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・人権尊重ということは、正当な思想を抑圧して小林多喜二のような卓抜な一個の社会人・作家を撲殺するようなことが決して在ってはならないという通念を意味する。同時に、それを主体的に云えば、一個の社会人・芸術家は、自分の理性がさし示す歴史の前進の方向・・・ 宮本百合子 「今日の生命」
・・・徳川時代の文学作品のあるものは、一種の町人文学として当時の官学流の硬い文学、経綸文学に対立し、庶民の日暮しの胸算用、常識を鋭く見て、例えば西鶴等はその方面の卓抜なチャンピオンであった。しかし、日本文学全体の歴史を通じて庶民の文学であるという・・・ 宮本百合子 「今日の文学の鳥瞰図」
・・・サーニが到頭、自身を卓抜な青年労働者にたたき上げる迄の過程に描かれているその「白い大理石の家」の内での生活は、特に老パルチザンである指導者アントーヌィッチの洞察と生活の意義に対する目標の確固不抜性、人生に対する愛と評価との態度は作者の心に湧・・・ 宮本百合子 「作品のテーマと人生のテーマ」
・・・去年の秋の作品であるが、この粗大な、民族的類型化を卓抜な科学者であるという沼田博士に云わしめているのである。アメリカに移民として働いている日本人の不正入国をしたものが何より恐れているのは、アメリカ人であるか、ニグロであるか、或は同じ日本人で・・・ 宮本百合子 「作家のみた科学者の文学的活動」
・・・で切りこんで行ったことはさすがに敬服に価する態度であるが、我々に負わされている肉体の健康、不健康の問題をもう一歩進んで動的なものと理解せず、どちらかと云えば個人的に宿命的な色彩で観察したところに、この卓抜な作家の及んで到らざるところがある。・・・ 宮本百合子 「昨今の話題を」
・・・年をとった人々でも、やはり尊敬をもって、この卓抜な一婦人科学者の堅忍と潔白とが成就せしめた業績を読みとったと思う。だが、キュリー夫人へのその讚歎をそれなりすらりと日本の現状にふりむけてみて、そこにある日本の婦人科学者の成長の可能条件の可否に・・・ 宮本百合子 「市民の生活と科学」
・・・、それぞれ多種多様な発展の段階にあって、プロレタリアートの世界観とその複雑多岐な実践に結びつけられ建設に寄与するものであって、社会主義建設の見とおしと方向において一致していても、必ずしも皆が皆いわゆる卓抜なるマルキシストではないわけです。・・・ 宮本百合子 「社会主義リアリズムの問題について」
出典:青空文庫