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・・・町全体の神経は、そのことの危懼と恐怖で張りきっていた。美学的に見えた町の意匠は、単なる趣味のための意匠でなく、もっと恐ろしい切実の問題を隠していたのだ。 始めてこのことに気が付いてから、私は急に不安になり、周囲の充電した空気の中で、神経・・・
萩原朔太郎
「猫町」
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・・・と我知らず洩されている片岡氏の危懼は、とりも直さず文学の現実としてその危懼をまねく何かの必然が今日に見えているからこそであろうと思える。刻々の歴史に対する客観的な眼力を喪えば、文学上のディフォーメイションはディフォームした人生の局面の屈伏し・・・
宮本百合子
「文学のディフォーメイションに就て」