・・・自分も即答はしかねたが、加藤男爵の事についてかねていくらか考えてみた事のあるので、「そうですねえ、まるきりがっかりしないでもないだろうと思う、というわけは、戦争最中はお互いにだれでも国家の大事だから、朝夕これを念頭に置いて喜憂したのが、・・・ 国木田独歩 「号外」
・・・その人はわたくしの一存では賠償金の多寡は即答する事ができないと云うので、結局はなしはまとまらず、山本さんと僕とは空しく退出した。そして三四日の後、山本さんの手から賠償金数千円を支払うことになった。僕が小石川のはずれまでぺこぺこ頭を下げに行っ・・・ 永井荷風 「申訳」
・・・明日の御みおつけの実は何に致しましょうとくると、最初から即答は出来ない男なんだから……」「何だい御みおつけと云うのは」「味噌汁の事さ。東京の婆さんだから、東京流に御みおつけと云うのだ。まずその汁の実を何に致しましょうと聞かれると、実・・・ 夏目漱石 「琴のそら音」
出典:青空文庫