・・・そして、次の襲撃方法の参考とした。 中隊長は、それをチャンと知っていた。しかし、パルチザンと百姓とは、同じ服装をしていれば、見分けがつかなかった。「逃げて行くパルチザンなんど、面倒くさい、大砲でぶっ殺してしまえやいいじゃないか。」・・・ 黒島伝治 「パルチザン・ウォルコフ」
・・・って日本が紀元二千七百年の美しいお祝いをしている頃に、私の此の日記帳が、どこかの土蔵の隅から発見せられて、百年前の大事な日に、わが日本の主婦が、こんな生活をしていたという事がわかったら、すこしは歴史の参考になるかも知れない。だから文章はたい・・・ 太宰治 「十二月八日」
・・・ ケレドモ、所詮、有閑ノ文字、無用ノ長物タルコト保証スル、飽食暖衣ノアゲクノ果ニ咲イタ花、コノ花ビラハ煮テモ食エナイ、飛バナイ飛行機、走ラヌ名馬、毛並ミツヤツヤ、丸々フトリ、イツモ狸寝、傍ニハ一冊ノ参考書モナケレバ、辞書ノカゲサエナイヨウ・・・ 太宰治 「走ラヌ名馬」
・・・ ご参考までに。」「いうことが、いちいち、きざだな。歴史的氏の悪影響です。」数枝は、気をよくしていた。「あたしは、ね、歴史的さんでも、助七でも、それから、ほかのひとでも、みんな好きよ。わるい人なんて、あたしは、見たことがない。お母さ・・・ 太宰治 「火の鳥」
・・・弁護士や、ポルジイと金銭上の取引をしたもの共が、参考に呼び出される。プラハとウィインとの間を、幾人かの尼君達が旅行せられる。実際鉄道庁で、この線路の列車の往復を一時増加しようかと評議をした位である。無論急行で、一等車ばかりを聯結しようと云う・・・ 著:ダビットヤーコプ・ユリウス 訳:森鴎外 「世界漫遊」
・・・尤も彼のような根本的に新しい仕事に参考になる文献の数は比較的極めて少数である事は当然である。いわゆるオーソリティは彼自身の頭蓋骨以外にはどこにも居ないのである。 彼の日常生活はおそらく質素なものであろう。学者の中に折々見受けるような金銭・・・ 寺田寅彦 「アインシュタイン」
・・・それで、これも不思議な錯覚の一例として後日の参考のためについでに書添えておくこととする。 寺田寅彦 「ある探偵事件」
・・・ 学校教育やいわゆる参考書によって授けられる知識は、いろいろの点で旅行案内記や、名所の案内者から得る知識に似たところがある。 もし学校のようなありがたい施設がなくて、そしてただ全くの独学で現代文化の蔵している広大な知識の林に分け入り・・・ 寺田寅彦 「案内者」
・・・テニソンの『アイジルス』は優麗都雅の点において古今の雄篇たるのみならず性格の描写においても十九世紀の人間を古代の舞台に躍らせるようなかきぶりであるから、かかる短篇を草するには大に参考すべき長詩であるはいうまでもない。元来なら記憶を新たにする・・・ 夏目漱石 「薤露行」
・・・と心配だから参考のため聞いて置く気になる。「どうしてって、別段の事情もないのだが――それだから君のも注意せんといかんと云うのさ」「本当だね」と余は満腹の真面目をこの四文字に籠めて、津田君の眼の中を熱心に覗き込んだ。津田君はまだ寒い顔・・・ 夏目漱石 「琴のそら音」
出典:青空文庫