・・・ しからばデンマーク人はどうしてこの富を得たかと問いまするに、それは彼らが国外に多くの領地をもっているからではありません、彼らはもちろん広きグリーンランドをもちます。しかし北氷洋の氷のなかにあるこの領土の経済上ほとんど何の価値もないこと・・・ 内村鑑三 「デンマルク国の話」
・・・また実際国外には支那を統一し、ヨーロッパを席捲した元が日本をうかがいつつあったのであった。 こうした時代相は年少の日蓮に痛切な疑いを起こさせずにおかなかった。彼は世界の災厄の原因と、国家の混乱と顛倒とをただすべき依拠となる真理を強く要請・・・ 倉田百三 「学生と先哲」
・・・そして、ゼーヤから掘りだしてきた砂金を代りにポケットへしのばして、また、河を渡り、国外へ持ち去った。 今は酒は珍らしくはない。国内で作られている。 今は、五カ年計劃の実行に忙がしかった。能率増進に、職場と職場が競争した。贅沢品や、化・・・ 黒島伝治 「国境」
・・・今後はもう国外旅行が宜さそうですネ。 幸田露伴 「旅行の今昔」
・・・また若い学士が申出したある可能現象の実験的検査をその先生の大家が一言の下に叱り飛ばしたのが、それから数年の後に国外の学者によってその若い学士によって予測された現象の実在が証明されたというようなことも適にはあるようである。 しかるに、西鶴・・・ 寺田寅彦 「西鶴と科学」
・・・一国内形体の安全を求めて、国外の安全に愉快を覚ゆるの精神に乏しき者なり。すなわち国の教育の未だ上達せざるものといいて可なり。 福沢諭吉 「教育の目的」
・・・そういう心でよんでみれば、古典から現代作家の、国内国外のあらゆる作家が、それぞれに見事な業績をのこしながらも、ほんとに自分の云いたいこと、あらわしてみたい心、描きたい情景だけは、誰もかいていないことを見出して、どんなおどろきと、新しい世界の・・・ 宮本百合子 「新しい文学の誕生」
・・・ ナチスから追われて国外に亡命したトーマス・マンの全家族、フォイヒトワンガー、ルドリヒ・レーン、エルンスト・トルラーなどは、それぞれ国外で反ファシズムと世界文化擁護のための活動をしていた。 けれども日本の一九三七年はメーデーを正式に・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十一巻)」
・・・ 戦争のある段階まで、いわゆる作家的成長欲やその本質を自問しないで、ただ経験の蓄積を願う古い自然主義風な現実主義から少なからぬ作家たちが国内、国外にあれこれ動員された。ところが、戦争が進むにつれ、軍そのものが、偽りで固めた人民むけ報道の・・・ 宮本百合子 「歌声よ、おこれ」
・・・ところが、僅か二年ばかりで一時的なその寛大な方法は急に反対の方向に働き出し、一八四九年からケーニヒスベルクの町だけでも何百回となく集会が禁止され、教会や学校が閉鎖され、国外へ追放される人たちが生じた。 自由宗教の牧師であったユリウス・ル・・・ 宮本百合子 「ケーテ・コルヴィッツの画業」
出典:青空文庫