・・・ 対岸には、搾取のない生産と、新しい社会主義社会の建設と、労働者が、自分たちのための労働を、行いうる地球上たった一つのプロレタリアートの国があった。赤い布で髪をしばった若い女が、男のような活溌な足どりで歩いている。ポチカレオへ赤い貨車が・・・ 黒島伝治 「国境」
・・・是非ねじれて進むのサ、真直に進むものはないよ。地球も自転しながら進むのだからつまり空間に螺旋しているのだよ。太陽も自転している以上はたしかに螺旋して進んでいるのだよ。月も螺転しているのサ。星もその通りサ。螺旋螺転なんというのは好い新熟字だろ・・・ 幸田露伴 「ねじくり博士」
・・・ これは、太陽の運命である。地球およびすべての遊星の運命である。まして地球に生息する一切の有機体をや。細は細菌より、大は大象にいたるまでの運命である。これは、天文・地質・生物の諸科学が、われらにおしえるところである。われら人間が、ひとり・・・ 幸徳秋水 「死刑の前」
・・・ 是れ太陽の運命である、地球及び総ての遊星の運命である、況して地球に生息する一切の有機体をや、細は細菌より大は大象に至るまでの運命である、これ天文・地質・生物の諸科学が吾等に教ゆる所である、吾等人間惟り此鈎束を免るることが出来よう歟。・・・ 幸徳秋水 「死生」
・・・しかしこればかりでは地球がいやでも西から東に転ずるのと少しも違ったところはない、徹した心持がない、生きていない、不満足である。そこでいろいろ考えて見ると、どうもやはりその底に撞きあたるものは神でも真理でもなくして、自己という一石であるように・・・ 島村抱月 「序に代えて人生観上の自然主義を論ず」
・・・何千年も前に、既に地球上から影を消したものとばかり思われていた古代の怪物が、生きてのそのそ歩いている、ああ、ニッポンに大サンショウウオ生存す、と世界中の学界に打電いたしました。世界中の学者もこれには、めんくらった。うそだろう、シーボルトとい・・・ 太宰治 「黄村先生言行録」
・・・眼をあけたときには、群集の山さ。地球の寵児さ。たった三日の辛抱だ。どうかしら? やる気はないかな。意気地のない野郎だねえ。ほっほっほ。いや、失礼。それでなければ犯罪だ。なあに、うまくいきますよ。自分さえがっちりしてれあ、なんでもないんだ。人・・・ 太宰治 「彼は昔の彼ならず」
・・・ 動物でも、なんとなしに不格好に見えるのはやはり現在の地球上に支配する環境の中で生活するのに不便なようにできているのではないかと思われてくる。犀などがだんだんに人間に狩り尽くされて絶滅しかけているという事実はたしかに彼らが現世界に生存す・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(3[#「3」はローマ数字、1-13-23])」
・・・それで、たとえば煙突の崩壊する光景の映画を半分の速度で映写すると、それは地球の四分の一の質量を有する遊星の上での出来事であるかのように見えるのである。同様なわけで器械の工率のディメンションは時間のマイナス三乗を含むから、映写機のハンドルを二・・・ 寺田寅彦 「映画の世界像」
・・・ その、四十年目の暑さに、地球がうだって、鮒共が総て目を白くして浮び上ったと思うことは、それは間違いであった。どこにでも避暑地と云うものがあった。日本には軽井沢があり、印度にはダージーリンがあり、アメリカには、ロッキーがあった。「人・・・ 葉山嘉樹 「乳色の靄」
出典:青空文庫