・・・ただ僕だけが変人であり、一人の自由と気まま勝手を楽しむのである。だがそれだけまた友が恋しく、稀れに懐かしい友人と逢った時など、恋人のように嬉しく離れがたい。「常に孤独で居る人間は、稀れに逢う友人との会合を、さながら宴会のように嬉しがる」とニ・・・ 萩原朔太郎 「僕の孤独癖について」
・・・古来、田舎にて好事なる親が、子供に漢書を読ませ、四書五経を勉強する間に浮世の事を忘れて、変人奇物の評判を成し、生涯、身を持て余したる者は、はなはだ少なからず。ひっきょう、技芸にても道徳にても、これを教うるに順序を誤り場所を誤るときは、有害無・・・ 福沢諭吉 「小学教育の事」
・・・あの方は全く変人なのね、学校は、着物を見せに来る処じゃあない、勉強する所です、って」 政子さんは、芳子さんの方が正しいと思いました。真個に学校は、呉服屋の広告に使われる処ではございません。けれども、皆より二つ年が上で、お家が大層なお金持・・・ 宮本百合子 「いとこ同志」
・・・「大衆の中へ!」というスローガンのかかげられていた時代に書かれた作品としてはマヤコフスキーの「南京虫」「風呂」。ベズィメンスキーの「射撃」「変人」。リベディンスキーの「英雄の誕生」等がある。 これらは、工場内の官僚主義に対する諷刺、プロ・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・先ず小説なぞを書くものは変人だとは確かに思っている。変人と思うと同時に、気の毒な人だと感じて、protg にしてくれるという風である。それが挨拶をする表情に見えている。木村はそれを厭がりもしないが、無論難有くも思っていない。 丁度近所の・・・ 森鴎外 「あそび」
出典:青空文庫