・・・いや、屈辱の大関くらいのところだ。」「そんな生意気な事を言うから、殴られるんだよ。」「そうかなあ、いやになるね。ひとを殴るなんて、狂人でなくちゃ出来ない事なんじゃないかな。僕はね、軍隊で、あんまり殴られるので、こっちも狂人の真似をし・・・ 太宰治 「母」
・・・小錦という大関だか横綱だかの白の肉体の立派で美しかったことと、朝潮という力士の赤ら顔が妙に気になったことなどが夢のように思い出されるだけである。 高等学校時代には熊本の白川の川原で東京大相撲を見た。常陸山、梅ヶ谷、大砲などもいたような気・・・ 寺田寅彦 「相撲」
・・・たとえば大関が相撲最上の長者なれば、九段は碁将棋最上の長者にして、その長者たるや、一等官が政事の長者たるに異ならざるなり。 されば、生れながらにして学に志し、畢生の精神を自身の研究と他人の教導とに用いて、その一方に長ずる者は、学問社会の・・・ 福沢諭吉 「学問の独立」
出典:青空文庫