・・・しかし、其の間に介在する灰色の階級や、主義者は、却って相互の闘争的精神を鈍らせるばかりでなく、真理に向っての前進を阻止する妨害をなすことを知らなければならない。一般に知識階級が、ある時期に際して、憎視され、甚だしき反感を買うのは、これがため・・・ 小川未明 「芸術は革命的精神に醗酵す」
・・・スパイは、僕等の結婚や、お祝いごとまでも妨害するのだ。僕は、若し、いつか親爺が死んだら、子として、親爺の霊を弔わなければならない。子として、親爺の葬儀をしなければならない。その時にでも、スパイは、小うるさく、僕の背後につき纒って、墓場にまで・・・ 黒島伝治 「鍬と鎌の五月」
・・・ 彼等は、自分の生存を妨害する犬どもを、撃滅してしまわずにはいられない欲求に迫られてきた。………… ウォルコフは、憎悪に満ちた眼で窓から、丘に現れた兵士を見ていた。 丘に散らばった兵士達は、丘を横ぎり、丘を下って、喜ばしそうに何・・・ 黒島伝治 「パルチザン・ウォルコフ」
・・・どうにかして妨害せねばならぬ。 さてどうしたものだろう。困る事には、ポルジイは依怙地な奴で、それが出来ないなら云々すると、暗に種々の秘密を示して脅かす。それが総て身分不相応な事である。そこで邸では幾度となく秘密の親族会議が開かれた。弁護・・・ 著:ダビットヤーコプ・ユリウス 訳:森鴎外 「世界漫遊」
・・・この事に関する誤解が往々正常なる科学の普及を妨害しているように見える。これは惜しむべきことである。 文章と科学「甲某の論文は内容はいいが文章が下手で晦渋でよくわからない」というような批評を耳にすることがしばしばある。・・・ 寺田寅彦 「科学と文学」
・・・この疑問の解答が一般に知られていないということが、学位をめぐるあらゆる不都合な事件の発生の胚芽となり、従っては一国の学術の健全な発達を妨害する一つの素因ともなり得るかと思われる。それ故にこの疑問を解くことは我国の学問の正常な発達のために緊要・・・ 寺田寅彦 「学位について」
・・・ 科学を奨励する目的で作られた機関が、自己の意志とは反対に、一生懸命科学の進歩を妨害しているという悲しむべき結果になる事もあるようである。これがいちばん困る。 科学も草木ものびのびと自由に生長させる方がよいようである。少しくらい雑草・・・ 寺田寅彦 「スパーク」
・・・るで考えないで、自分さえ切符を買ってしまえばそれでいいという紳士淑女達のことであるから、切符売子と色々押し問答をした上に、必ず大きな札を出しておつりを勘定させる、その上に押し合いへし合いお互いに運動を妨害するから、どうしても一人宛平均三十秒・・・ 寺田寅彦 「マーカス・ショーとレビュー式教育」
・・・ 十五 科学を奨励する目的で、われわれが誠心誠意でやっている事が、事実上の結果において、かえって正しく科学の進歩を妨害しているような悲しむべき場合が、全くないとは言われない。これは、注意していなければならない・・・ 寺田寅彦 「鑢屑」
・・・三吉はわざとマッチを借りたりして妨害するが、深水の演説口調はなかなかやまない。そのうち、こんどは急に声の調子まで変えていった。「――しかし、つまるところはですナ、ご両人でよろしくやってもらうよりないんだよ。わしはその、月下氷人でネ、これ・・・ 徳永直 「白い道」
出典:青空文庫