・・・あの若さで守銭奴とは。O君はよい。男ぶりだけでも。○昼は消えつつものをこそ思う。○水戸黄門、諸国漫遊は、余が一生の念願也。○私は尊敬におびえている。○没落ばんざい。○パスカルを忘れず。○芸娼妓の七割は、精神病者である・・・ 太宰治 「古典風」
・・・人は、私の守銭奴ぶりに、呆れて、憫笑をもらしているかも知れないけれど、私は、ちっとも恥じていない。私は、無理をしたくないのだ。このごろは、作品の掲載以前に、雑誌社へお金をねだることも、決してしない。なるべく、知らぬふりをしている。くれなけれ・・・ 太宰治 「春の盗賊」
・・・もしもこれあれば、いわゆる守銭奴として世に齢せられざることならん。されば今日、我が日本国の教育を蒙りたる学者は、とうてい殖産の社会に適用すべき者にあらず。殖産に不適当なる人物なれば、いかなる卓識の先生も、いかなる専門芸能の学士も、碁客将棋師・・・ 福沢諭吉 「慶応義塾学生諸氏に告ぐ」
・・・値打が下るから、ますます人には頼れない、ますますたよりになるのは自分だけと、一層エゴイスティックな気持の中にちぢこまる、と同時に、金の方はいつかマイナスになってしまって、のこるのは不具にこりかたまった守銭奴的人間性だけということになります。・・・ 宮本百合子 「社会と人間の成長」
出典:青空文庫