・・・ 然るに彼の講和論者たる勝安房氏の輩は、幕府の武士用うべからずといい、薩長兵の鋒敵すべからずといい、社会の安寧害すべからずといい、主公の身の上危しといい、或は言を大にして墻に鬩ぐの禍は外交の策にあらずなど、百方周旋するのみならず、時とし・・・ 福沢諭吉 「瘠我慢の説」
・・・何でも一身の打算と安寧からだけ進退したがる現今の人心を、よいと認めることの出来ない常識に、こういう山本有三氏の或る程度の社会正義感の発動は、少なからず触れるものをもっているのは自然である。山本有三氏の正義感は、常識を備えた今日の一般人の胸の・・・ 宮本百合子 「山本有三氏の境地」
・・・「英国人の着実な商魂が実際においてどれだけの働きをしているかと云うことは、炭坑夫安寧協会の仕事を見ても分る。炭坑主が一頓について一ペンスだけ出して独立な大きいビジネスをやってるんだ。」 しかし、その同じ着実な商魂が考え出した英国炭坑・・・ 宮本百合子 「ロンドン一九二九年」
・・・父を失ったあらゆる子供たちの将来の安寧と幸福を築き守るものは、共通の涙と奮起する心とを知り合っている婦人たちの実行ばかりである。 婦人参政権の問題がおこってより、お互によくこういう批評をきいた。日本の婦人は、実に自覚がなくて、自分たちの・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
・・・「われわれがその子供たちの生命とその家庭の安寧を守ることを神聖な義務と考えていることを、世界の希望をになう婦人および母親たちに知らしめよ。世界の青年に告げて、未来の輝やかしい道から大量殺人を一掃するために、政治的意見、信教に関係なく団結せし・・・ 宮本百合子 「わたしたちには選ぶ権利がある」
・・・その趣意は、あんな消極的思想は安寧秩序を紊る、あんな衝動生活の叙述は風俗を壊乱するというのであった。 丁度その頃この土地に革命者の運動が起っていて、例の椰子の殻の爆裂弾を持ち廻る人達の中に、パアシイ族の無政府主義者が少し交っていたのが発・・・ 森鴎外 「沈黙の塔」
出典:青空文庫