・・・今日の主婦のすべてが経験している家事の重荷、これから結婚しようとする若い婦人たちをおそれさすほど重い世帯の苦労は、まじめなすべての男子が自分たちの不幸の一つとして見ているものです。愛しあった男女というのは、その社会的な苦労を、自分たちの一生・・・ 宮本百合子 「生きるための恋愛」
・・・主婦たちが、いろいろの内容のクラブをつくって有益にたのしく暮すときくが、それはつまり家事の単純化されていることとまったくつながった文化性であることを、きょうの日本の主婦は知りぬいている。 男と同じに女も教育をうけられるようになった。やっ・・・ 宮本百合子 「偽りのない文化を」
・・・ドミトリーは勇気を失うまいとしながら、グラフィーラの、家事で荒れて大きい手をとった。「グラーシャ! わかってくれ。俺あ育ったんだ。元の俺じゃなくなったんだ。」 月給を貰うと、まあ自分には時計の鎖でも買ったり、グラフィーラに新しいショ・・・ 宮本百合子 「「インガ」」
・・・博識な良人につれそう家事的な情愛深い妻としてアンリエットは、息子カールに対しても、言葉のすくない母の愛で、その精神と肉体とをささえていたと思われる。男の子が、もし母の愛と、その生活の姿とで、女性への優しい思いやりをはぐくまれなかったら、どう・・・ 宮本百合子 「カール・マルクスとその夫人」
・・・その一日の仕事の帰り途、市場へまわって夫婦は一緒に夕飯のための材料を買いました。家事の雑用を最も手まわしよくやって三時間。それからマリヤの夜の時間は家計簿の記入と中等教員選抜試験準備のためにつかわれて、朝の二時三時まで二つしか椅子のないキュ・・・ 宮本百合子 「キュリー夫人の命の焔」
・・・ 家庭にいても何か一つ本気でやろうとする仕事をもっていれば、確に彼女は時間の上手なやりくりや家事の単純化を実行するでしょう。些細な日常の感情軋轢を整理することをおのずから学ぶであろうし、その点では、仕事そのものの上達につれて二重の賢さ、・・・ 宮本百合子 「現実の道」
・・・女子大学などには家事のいろいろの表がございます。そういうものがあっていろいろ考えていらっしゃるから、ある場合には大へん新しい正しい方法をなさるし、年とった方から見れば「そんな面倒臭いことをいわないでも手加減ですよ」と、おっしゃるような場合が・・・ 宮本百合子 「幸福の建設」
・・・更に、まだ全然社会化されていない日本家庭の家事の負担は、家庭の主婦を過労にさせているばかりか、すべての勤労婦人にとって二重の疲労をもたらしているのです。日本婦人大衆の生活の実状は、このようなものです。戦争による未亡人の生活確立に関して、植民・・・ 宮本百合子 「国際民婦連へのメッセージ」
・・・顕治に代って家事経営の中心になっていた。一九四五年八月六日広島の原爆当日、三度目の応召で入隊中行方不明となった。同年十二月死去の公報によって葬儀を営んだ。十月十日に網走刑務所から解放されて十二年ぶりで東京にかえった顕治と百合子が式に列した。・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・ 次に女は毎日の実生活の上に於いて、家事上の事柄に力を浪費することも大きなものです。たとい女中を使ってするにしても、その中心になる仕事に対しては、主婦がこれを指揮しなくてはならず、従って家のことを忘れて白熱的の力で文芸に専念する場合、そ・・・ 宮本百合子 「今日の女流作家と時代との交渉を論ず」
出典:青空文庫