・・・ 初めは、奪う愛は誤っている、与える愛でなければならないと細君の教育や家政への手助けや大いに努めるが、やがて「それでは男の精神が寂しい。行動では我ままをしてもいいのだ。奪われる愛というものも、特に女にとっては在っていいのだ」というところ・・・ 宮本百合子 「「結婚の生態」」
・・・日夜辛苦して家政をみている婦人が共にめざめたのも当然です。めざめた人民の命を削りながら日一日とひどくなるインフレーションに対し、はじめからインフレーション政策をとっている石橋が今ラジオで再び幼な児の如く政府を信じろというとき人民は目をみはり・・・ 宮本百合子 「今度の選挙と婦人」
・・・次から次へと生れて来る子供たちの世話をしたり、家政をとる傍ら、徹夜までしてレフ・トルストイの作品の浄書をして援けて来たソフィヤ夫人とトルストイの間は、トルストイが一度、一度と精神的危機を経験する毎に離反の度を増して来た。一八八七年、五十九歳・・・ 宮本百合子 「ジャンの物語」
・・・ 僅かながら年々絶えず出版されていたのは家事・家政・料理・育児・裁縫・手芸などの本で、それにしろ程度から云うと大体は補習書めいたものが多い。 これらの状態を、ひとめでわかる統計図にして、今日の日本の若い女性たちが眺めたら、彼女たちは・・・ 宮本百合子 「女性の書く本」
・・・あれを見ると、例えば、家政婦に住み込みたいとか、家政婦を求めるとか、というようなことが、何か知ら曖昧な、いろいろの世相が、これにも感じられ味わわれるような気がして、わたくしには面白い。広告欄はたいして注意しませんが、でもブック・レビューなど・・・ 宮本百合子 「身辺打明けの記」
・・・その手紙の内容は、ある田舎の荘園で、女主人は病弱なので家政婦が家事取締りしている。その助手と鶏舎の監督をする健康な飽きっぽくない若い婦人を求めているのであった。ジェーンは、その手紙をくりかえしてよんで考える。この手紙には何一つ特別珍しいこと・・・ 宮本百合子 「働く婦人の新しい年」
・・・ ベルニィ夫人の生活は、その時既に新興ブルジョアと成上り貴族によって経済的に圧迫された貴族、人知れずやりくりに心を労し「小作人、家政のうんざりする細々したこと」に自ら煩わされなければならない、落魄に瀕した旧貴族階級の典型のようなものであ・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
・・・ よし又、教員として技量に自信を持たなければ家政婦としても、家事助手となっても、生きて行く道は数多あります。方法が見出し難いと云うのは、寧ろ自己弁護であるようにさえ思われました。詰り、良人に対する真心の愛は案外薄弱なもので結局第三の良人・・・ 宮本百合子 「ひしがれた女性と語る」
・・・ 同じ一つの新聞が、三田土ゴムの女工さんであった児玉しづ子をはじめ多くの婦人党員が、男の党員とともにめざましい働きをしたと書きながら、裏をかえすとまるで婦人党員は、家政婦の役だの色仕掛で金をまき上げるようなことだのばかりしていたように書・・・ 宮本百合子 「婦人党員の目ざましい活動」
・・・女子大学の家政科というようなところで、生計指導のための展覧会を行った。現実の物資の条件をどう理解して、どのような生活設計を立てるべきかという指導を目的としたものであったが、そこに書き出され、物価指数、生計指数として示されている数字は、ほとん・・・ 宮本百合子 「婦人の文化的な創造力」
出典:青空文庫