・・・ 間瀬久太夫が、誰に云うともなくこう云うと、原惣右衛門や小野寺十内も、やはり口を斉しくして、背盟の徒を罵りはじめた。寡黙な間喜兵衛でさえ、口こそきかないが、白髪頭をうなずかせて、一同の意見に賛同の意を表した事は、度々ある。「何に致せ・・・ 芥川竜之介 「或日の大石内蔵助」
・・・あるいはまた津田君の寡黙な温和な人格の内部に燃えている強烈な情熱のほのおが、前記の後期印象派画家と似通ったところがあるとすれば猶更の事であろう。 ある批評家はセザンヌの作品とドストエフスキーの文学との肖似を論じている。自分も偶然に津田君・・・ 寺田寅彦 「津田青楓君の画と南画の芸術的価値」
・・・ 言語を慎みて多くす可らずとは、寡黙を守れとの意味ならん。諺に言葉多きは科少なしと言い、西洋にも空樽を叩けば声高しとの語あり。愚者の多言固より厭う可し。況して婦人は静にして奥ゆかしきこそ頼母しけれ。所謂おてんばは我輩の最も賤しむ・・・ 福沢諭吉 「女大学評論」
出典:青空文庫