・・・もちろん、おかみにも、また、トシちゃんにも、そんな事とは気づかなかったが、妙にお小用が近いので、おかみがトシちゃんを病院に連れて行って、しらべてもらったらその始末で、しかも、もう両方の腎臓が犯されていて、手術も何もすべて手おくれで、あんまり・・・ 太宰治 「眉山」
・・・軽井沢近くまではどうか斯うが無事に来たが、沓かけ駅から一つ手前で、窓から小用をした人が、客車の下に足を見つけ、多分バク弾を持った朝鮮人がかくれて居るのだろうとさわぎ出す。前日軽井沢で汽車をテンプクさせようとした鮮人が捕ったところなので皆、さ・・・ 宮本百合子 「大正十二年九月一日よりの東京・横浜間大震火災についての記録」
・・・外の女ならこんな時手水にでも起きるのだが、お金は小用の遠い性で、寒い晩でも十二時過ぎに手水に行って寝ると、夜の明けるまで行かずに済ますのである。お金はぼんやりして、広間の真中に吊るしてある電灯を見ていた。女中達は皆好く寐ている様子で、所々で・・・ 森鴎外 「心中」
出典:青空文庫