・・・清八は取り敢ず御鷹匠小頭より、人を把るよしを言上しけるに、そは面白からん、明日南の馬場へ赴き、茶坊主大場重玄を把らせて見よと御沙汰あり。辰の刻頃より馬場へ出御、大場重玄をまん中に立たせ、清八、鷹をと御意ありしかば、清八はここぞと富士司を放つ・・・ 芥川竜之介 「三右衛門の罪」
・・・―― 村の在郷軍人で、消防の小頭をし、同時に青年団の役員をつとめている仙二が心を悩ましていたのは、お園のことや、近く迫っている役員改選期のことではなかった。沢や婆さんのことであった。 何故、この白髪蓬々の、膝からじかに大きな瞼に袋の・・・ 宮本百合子 「秋の反射」
・・・表門は側者頭竹内数馬長政が指揮役をして、それに小頭添島九兵衛、同じく野村庄兵衛がしたがっている。数馬は千百五十石で鉄砲組三十挺の頭である。譜第の乙名島徳右衛門が供をする。添島、野村は当時百石のものである。裏門の指揮役は知行五百石の側者頭高見・・・ 森鴎外 「阿部一族」
・・・酒井家からは目附、下目附、足軽小頭に足軽を添えて、乗物に乗った二人と徒歩の文吉とを警固した。三人が筒井政憲の直の取調を受けて下がったのは戌の下刻であった。 十六日には筒井から再度の呼出が来た。酉の下刻に与力仁杉八右衛門の取調を受けて、口・・・ 森鴎外 「護持院原の敵討」
出典:青空文庫