・・・ 老いたるカトンは、サルジニア総督時代には、徒歩で巡視をした。お供と云えば唯国の役人を一人つれたきりで、いや最も屡々、自分で行李を持って歩いた。彼は、一エキュ以上する着物を着たことがない、一日に一文以上市場に払ったことがない、と自慢した・・・ 太宰治 「『井伏鱒二選集』後記」
・・・学生であるか巡視であるか遠いのでよくわからなかったが、少し変な気持ちがした。その後さらに数日たって後、同じ大学の中央にそびえた講堂の三階から飛んだ学生があったという夕刊記事を読んで、また変な気持ちがした。この終わりの自殺者と、前の図書館屋上・・・ 寺田寅彦 「LIBER STUDIORUM」
・・・ 三、ペンネンネンネンネン・ネネムの巡視 ばけもの世界裁判長になったペンネンネンネンネン・ネネムは、次の朝六時に起きて、すぐ部下の検事を一人呼びました。「今日は何時に公判の運びになっているか。」「本日もやはり晩の・・・ 宮沢賢治 「ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記」
出典:青空文庫