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・・・「だって死骸を水葬する時には帆布か何かに包むだけだろう?」「だからそれへこの札をつけてさ。――ほれ、ここに釘が打ってある。これはもとは十字架の形をしていたんだな。」 僕等はもうその時には別荘らしい篠垣や松林の間を歩いていた。木札・・・
芥川竜之介
「蜃気楼」
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・・・ その式場を覆う灰色の帆布は、黒い樅の枝で縦横に区切られ、所々には黄や橙の石楠花の花をはさんでありました。何せそう云ういい天気で、帆布が半透明に光っているのですから、実にその調和のいいこと、もうこここそやがて完成さるべき、世界ビジテリア・・・
宮沢賢治
「ビジテリアン大祭」