・・・ ジャズ舞踊と演劇とを見せる劇場は公園の興行街には常盤座、ロック座、大都劇場の三座である。踊子の大勢出るレヴューをこの土地ではショーとかヴァライエチーとか呼んでいる。西洋の名画にちなんだ姿態を取らせて、モデルの裸体を見せるのはジャズ舞踊・・・ 永井荷風 「裸体談義」
・・・其時分は常盤会寄宿舎に居たものだから、時刻になると食堂で飯を食う。或時又来て呉れという。僕が其時返辞をして、行ってもええけれど又鮭で飯を食わせるから厭だといった。其時は大に御馳走をした。鮭を止めて近処の西洋料理屋か何かへ連れて行った。 ・・・ 夏目漱石 「正岡子規」
・・・『若菜集』におけるあの婉やかな曲線的表現は、「常盤樹」に来て、非常に直線的な格調をもちはじめた。用語も、和文脈から漢詩の様式を思い浮ばせる形式に推移して来る。「常盤樹」にしろさらに「鼠をあわれむ」「炉辺雑興」「労働雑詠」等に到って、この・・・ 宮本百合子 「藤村の文学にうつる自然」
・・・ 二人の女君は後室の妹君の娘達、二親に分れてからはこの年老いた伯母君を杖より柱よりたよって来て居られるもの、姉君を常盤の君、若やいだ名にもにず、見にくい姿で年は二十ほど、「『誘う水あらば』って云うのはあの方だ」とは口さがない召使のかげ口・・・ 宮本百合子 「錦木」
・・・来会者は井上、元良、中島、狩野、姉崎、常盤、中島、戸川、茨木、八田、大島、宮森、得能、紀平の諸氏であったという。これらの中の一番若い人でも大学生から見ると先生だったのであるから、こういう出来事はすべて別世界のことであって、わたくしたちには知・・・ 和辻哲郎 「初めて西田幾多郎の名を聞いたころ」
出典:青空文庫