・・・忠君忠義――忠義顔する者は夥しいが、進退伺を出して恐懼恐懼と米つきばったの真似をする者はあるが、御歌所に干渉して朝鮮人に愛想をふりまく悧口者はあるが、どこに陛下の人格を敬愛してますます徳に進ませ玉うように希う真の忠臣があるか。どこに不忠の嫌・・・ 徳冨蘆花 「謀叛論(草稿)」
・・・「味噌汁の実まで相談するかと思うと、妙なところへ干渉するよ」「へえ、やはり食物上にかね」「うん、毎朝梅干に白砂糖を懸けて来て是非一つ食えッて云うんだがね。これを食わないと婆さんすこぶる御機嫌が悪いのさ」「食えばどうかするのか・・・ 夏目漱石 「琴のそら音」
・・・むしろ干渉のみを事とした形迹がある。それにもかかわらず、わが文学は過去数年の間に著るしい発展をした。余の見る所を以てすると、現今毎月刊行の文学雑誌に載る幾多の小説の大部分は、英国の『ウィンゾー』などに続々現れてくる愚劣な小説よりも、どの位芸・・・ 夏目漱石 「文芸委員は何をするか」
・・・しかし政府はけっして干渉がましい事をしません。黙って放っておくのです。その代り示威運動をやる方でもちゃんと心得ていて、むやみに政府の迷惑になるような乱暴は働かないのです。近頃女権拡張論者と云ったようなものがむやみに狼藉をするように新聞などに・・・ 夏目漱石 「私の個人主義」
・・・其両親に遠ざかるは即ち之に離れざるの法にして、我輩の飽くまでも賛成する所なれども、或は家の貧富その他の事情に由て別居すること能わざる場合もある可きなれば、仮令い同居しても老少両夫婦の間は相互に干渉することなく、其自由に任せ其天然に従て、双方・・・ 福沢諭吉 「女大学評論」
・・・る者をして、かねて政事の権をとらしむるが如きは、ほとんどこれを禁制として、政権より見れば、学者はいわゆる長袖の身分たらんこと、これまた我が輩の祈るところにして、これを要するに、学問をもって政事の針路に干渉せず、政事をもって学問の方向を妨げず・・・ 福沢諭吉 「学問の独立」
・・・ゆえに我が義塾においては、生徒の卒業に至るまでは、ただ学識を育して判断の明を研くの一方に力をつくし、業成り塾を去るの後は、行くところに任して、かつてその言行に干渉するなしといえども、つねにその軽率ならざるを祈り、論ずるときは大いに論じ、黙す・・・ 福沢諭吉 「経世の学、また講究すべし」
・・・例えば、政府の施政が気に喰わなんだり、親達の干渉をうるさがったり、無暗に自由々々と絶叫したり――まあすべての調子がこんな風であったから、無論官立の学校も虫が好かん。処へ、語学校が廃されて商業学校の語学部になる。それも僅かの間で、語学部もなく・・・ 二葉亭四迷 「予が半生の懺悔」
・・・無事に女学校教育を終らせて、嫁入らせようとしている親の手にわたすのが、一貫した目的であったから、万事が事大主義で、髪の形まで、干渉した。ほんの何年か経ったあとには、すべての女学生はおかっぱとさえなったが、一般がそうなればその女学校の先生たち・・・ 宮本百合子 「女の学校」
・・・最近民主主義教育者協会に加えられた紛糾の折、東宝社長が都の当局者に教員資格審査委員としての圧力を加えて、反民主的な干渉をしようとしたことはひろく知られている。 日本の人民が自分たちの健康でゆたかな毎日の生活と文化を求めて努力している心は・・・ 宮本百合子 「三年たった今日」
出典:青空文庫