・・・たどたどしい幼女の筆蹟である。 オ星サマ。日本ノ国ヲオ守リ下サイ。 大君ニ、マコトササゲテ、ツカエマス。 はっとした。いまの女の子たちは、この七夕祭に、決して自分勝手のわがままな祈願をしているのではない。清純な祈りであると思った・・・ 太宰治 「作家の手帖」
・・・いや、モスクワ市内の事務所役所のひける四時、四時後、九時頃まではよたよた歩きをする年頃からはじまって小学校ぐらいまでの幼童幼女で並木通りは祭だ。その間を赤衛兵が散歩する。ピオニェールが赤いネクタイをひらひらさせて通る。もちろんいかさま野師も・・・ 宮本百合子 「子供・子供・子供のモスクワ」
・・・そして、何ということもない雑談の間に、夫人が西村家の明治時代らしく、大づかみで活溌な日常生活の中で成人された幼女時代の思い出や、妻となり母となってからの生活の感想を理解するようになった。 母が、お孝さんは熱情家だ、と云った言葉は、おおざ・・・ 宮本百合子 「白藤」
・・・ 一体、私は、幼女の時代から、概して幸福といわれる境遇のうちに育ちました。子供にとって幸福というのは、充分な父母の愛と、相当な物資の余裕、健康、稍長じては各自の個性を認めようとする常識を両親が持っていてくれるということです。私は、幸い丈・・・ 宮本百合子 「われを省みる」
出典:青空文庫