・・・そして、もっとも注目すべきことは、ファシズムへの精神総動員文学論の、どれをとってみても、その議論のどこかには、当時の文学を客観した場合に見出される欠陥、市民としての判断にうつる文学者生活の弱体な点への批判がふくまれていたことである。だから、・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十一巻)」
・・・もしきょうの私たちの生活を民主的というのならば、それは皮肉にも、インフレーションや政府の弱体から来るすべての苦痛を負わされるのはいまも人民が主であるという実際をいいあらわす民主であるとさえ感じます。 この事実は、昨今新聞に発表されて、わ・・・ 宮本百合子 「婦人大会にお集りの皆様へ」
・・・ 真珠湾の不意打攻撃は皮相的に勝利のように見えたが、戦闘が日一日と進むにつれて、現実は日本の近代国家としての弱体を現わし始めた。戦争遂行者たちの軍需生産に対する焦慮は極端に昂まった。昭和十四年までは労務動員計画と呼ばれていた労働力に対す・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
・・・怒らず働いて、生活の不安がなくなるものならば、どうして少年少女の時代から怒らず工場でよく働きつづけた今日の青年達が、弱体であり、知能が低いと保健省を驚駭させるのであろうか。 働いている若い女のひとと、働らかないで暮していられる女のひとと・・・ 宮本百合子 「私たちの社会生物学」
出典:青空文庫