・・・「悪習は除去すべきである。本郷区千駄木町五十、吉田潔。」 月日。「言わなければならぬと思いながら言えない。夏休みになったら手紙をかこうと決心した。手紙をかき度い。かかなければならぬと、思いながらなぜかけないのかということを考・・・ 太宰治 「虚構の春」
・・・ この悪習は忽必烈が厳禁してやっと止まったとある。 この地方の人は始終毒を携帯して歩いている。もし何か自分の悪事が見付かって罰せられそうになると、大急ぎでその毒を仰いで自決をしようとする。これは存外見上げたものだと思われる。ところが・・・ 寺田寅彦 「マルコポロから」
・・・を起こして家人の情を痛ましめ、以てその私徳の発達を妨げ、不孝の子を生じ、不悌不友の兄弟姉妹を作るは、固より免るべからざるの結果にして、怪しむに足らざる所なれども、ここに最も憐れむべきは、家に男尊女卑の悪習を醸して、子孫に圧制卑屈の根性を成さ・・・ 福沢諭吉 「日本男子論」
・・・女優がパリの流行雑誌まるうつしの扮装でマネキンみたいに舞台をのたつく悪習をもつと云われている諷刺劇場なんか六十パーセントだ。 ソヴェトの劇場は、今までいつも一つ大きな困難をもって来た。劇場建築が旧式で小さいということだ。昔はそれでもよ・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの芝居」
出典:青空文庫