・・・にもかかわらず、現内閣は、よたつきながら、今倒れるか、今倒れるかと思われながら、とうとうモラトリアム公表という重大な危機さえ突破して、どういう工合に作成されたものか、一昨日には憲法改正草案を発表するところまでもち越して来ている。 私たち・・・ 宮本百合子 「現実の必要」
・・・自由民権を、欽定憲法によってそらした権力は、この一つの小規模な、未熟な、社会主義思想のあらわれを、できるだけおそろしく、できるだけ悪逆なものとして扱って、封建風のみせしめにした。みせしめは、近代日本が法治国であるという一応のたて前から、いつ・・・ 宮本百合子 「現代の主題」
・・・ こんどの憲法草案を、そういう立場から考えますと、私たちにとって非常に重大な関係があることがわかってまいります。 憲法というものは、決して、大理石に刻みつけて、何かの記念品のように、土の中に埋めてしまうものではないのです。生きている・・・ 宮本百合子 「幸福について」
・・・ところが明治時代から今日までにできた日本の憲法、民法、刑法その他のものを見ました時に、先程もいろいろの方がお話になっておりました通り、それは法律の恰好はしていても非常に変てこなのです。たとえば繰返し繰返しいわれているように、女の人が一人前に・・・ 宮本百合子 「幸福の建設」
・・・マルケル・ブイコフが『憲法』って言葉をつかう。ズブの無学文盲の農民は、この作者が喋らしているような喋りかたはしねえもんだ。『神聖な処女の噺』は、ありゃ新聞からとって来たもんだね。俺等の村じゃああいう、『神聖なもの』はどんな馬鹿な奴だって引き・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・ 改めて、「この、君の文章の中の『この地球はじめて人間らしい憲法がつくられた』とか『勤労大衆の代表と社会主義社会建設の闘士を選べ!』とか云うのは、どういう意味なんだ」と詰問した。自分は、「どれ、一寸見せて下さい」と注意ぶ・・・ 宮本百合子 「刻々」
・・・又憲法が改正され、民法改正草案が示され労働基準法が審議されつつあります。旧い封建日本はようよう近代の民主的な人民の生活を持とうとしているようにみえます。社会のあらゆる面での男女の差別待遇は、憲法によって確認された基本的人権における男女の平等・・・ 宮本百合子 「国際民婦連へのメッセージ」
・・・その他日本的な種々雑多な因子としている上に、将来日本が憲法をかえてさえ再武装するかもしれないという信じがたいほどの民族的苦痛の要因に重くされている。 わたしが生活と文学とにコンプレックスを全然持たないか、或は極く少くしかもたない女だとい・・・ 宮本百合子 「心に疼く欲求がある」
・・・またそれがこの地のさだめかという代りに「それがこの鉱泉の憲法か」などいう癖あり。ある時はわが大学に在りしことを聞知りてか、学士博士などいう人々三文の価なしということしたり顔に弁じぬ。さすがにことわりなきにもあらねど、これにてわれを傷けんとお・・・ 森鴎外 「みちの記」
・・・この心持ちが、憲法発布以後に生まれた我々に、そっくりそのまま伝わって来ないのは当然である。我々は物を覚え始める最初から皇室を日本の絶対的主権者として仰いでいる。この皇室を守るために、国内の他の勢力に対して反抗するというような情熱は、切実に起・・・ 和辻哲郎 「蝸牛の角」
出典:青空文庫