・・・なおはなはだしきは、かの血気の少年軍人の如きは、ひたすら殺伐戦闘をもって快楽となし、つねに世の平安をいとうて騒乱多事を好むが如し。ゆえに平安の主義は、人類のこの一部分に行われて、他の一部分には通用すべからずとの問題あれども、この問題に答うる・・・ 福沢諭吉 「教育の目的」
・・・社会の公議輿論、すなわち一世の気風は、よく仏門慈善の智識をして、殺人戦闘の悪業をなさしめたるものなり。右はいずれも、人生の智徳を発達せしめ退歩せしめ、また変化せしむるの原因にして、その力はかえって学校の教育に勝るものなり。学育もとより軽々看・・・ 福沢諭吉 「徳育如何」
・・・ それから戦闘艦隊が三十二隻、次々に出発し、その次に大監督の大艦長が厳かに舞いあがりました。 そのときはもうまっ先の烏の大尉は、四へんほど空で螺旋を巻いてしまって雲の鼻っ端まで行って、そこからこんどはまっ直ぐに向うの杜に進むところで・・・ 宮沢賢治 「烏の北斗七星」
・・・そして毎日、新聞で見る今日の銃後の女としての服装もエプロン姿から、たとえそれがもんぺいであろうと、作業服式のものであろうと、ひとしくりりしい裾さばきと、短くされたたもととをもって、より戦闘的な型へ進んで来ているのである。 私たち女は一年・・・ 宮本百合子 「新しい婦人の職場と任務」
・・・そのうちで、戦闘員だったものは千五百万人、最低その三倍の非戦闘員が、空襲とナチスやファシストの強制収容所、地下の抗戦運動で殺害されている。日本の軍部は、太平洋戦争で百八十五万人を死なせた。全国には百八十万人の未亡人が飢餓線に生きている。千円・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第八巻)」
・・・そして、外国の新聞はこの戦闘行為の性質を解剖して、その背後の勢力を考えるとこの白沙漠に於ける戦闘はスペインの内乱の如き性質を持つものであると言っている。 今やイタリーにとってアフリカの植民地問題は従来のような人口問題の解決法としての域を・・・ 宮本百合子 「イタリー芸術に在る一つの問題」
・・・彼が戦闘的唯物論者らしく部落内の現象の分析綜合をなし得たら、「彼女の古い精神がいかに社会変革をきらっていようとも彼女のからだ――生活はこれを熾烈に要求しているのだ。要求せざるを得なくなっているのだ。」という二元論は成り立たぬであろう。古い伝・・・ 宮本百合子 「一連の非プロレタリア的作品」
・・・ナポレオンの爪に猛烈な征服慾があればあるほど、田虫の戦闘力は紫色を呈して強まった。全世界を震撼させたナポレオンの一個の意志は、全力を挙げて、一枚の紙のごとき田虫と共に格闘した。しかし、最後にのた打ちながら征服しなければならなかったものは、ナ・・・ 横光利一 「ナポレオンと田虫」
・・・研究所へ着くなり栖方は新しい戦闘機の試験飛行に乗せられ、急直下するその途中で、機の性能計算を命ぜられたことがあった。すると、急にそのとき腹痛が起り、どうしても今日だけは赦して貰いたいと栖方は歎願した。軍では時日を変更することは出来ない。そこ・・・ 横光利一 「微笑」
・・・彼らの武器は、彼らのとるべき戦法は、彼らの戦闘の造った文化のために益々巧妙になるであろう。益々複雑になるであろう。益々無数の火花を放って分裂するであろう。かかる世紀の波の上に、終にまた我々の文学も分裂した。 明日の我々の文学は、明らかに・・・ 横光利一 「黙示のページ」
出典:青空文庫