・・・ こんな事を考えていたのであるが、今年の夏房州の千倉へ行って、海岸の強い輻射のエネルギーに充たされた空間の中を縫うて来る涼風に接したときに、暑さと涼しさとは互いに排他的な感覚ではなくて共存的な感覚であることに始めて気が付いたのである。暑・・・ 寺田寅彦 「さまよえるユダヤ人の手記より」
・・・してその農民の枠内でだけ把握し描写し、一歩突き進んで、ロシアの歴代の農民はなぜツルゲーニェフやトルストイ時代、農業機械をきらって来たか、その同じ機械ぎらいが、ソヴェト権力の下でさえも猶農業機械に対して排他的であり、ガンコであることは、どうい・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・ 日本人が日本人としての自意識によって 神経質で敏感で排他的になることとの対比。アメリカ そのかたまらない若々しさ 血気 生活力 理智の新しさ・・・ 宮本百合子 「ツワイク「三人の巨匠」」
・・・小市民的な排他的な両親の家庭から脱出したつもりで四辺を見まわしたら、自分と対手とのおちこんでいるのは、やっぱりケチな、狭い、人間的燃焼の不足な家庭の中だった。檻の野獣のように苦しんだ。対手をも苦しめた。対手は十五年アメリカで苦労したあげ・・・ 宮本百合子 「年譜」
出典:青空文庫