・・・一つの種子の生命は土壌と肥料その他唯物的の援助がなければ、一つの植物に成育することができないけれども、そうだからといって、その種子の生命は、それが置かれた環境より価値的に見て劣ったものだということができないのと同じことだ。 しかるに空想・・・ 有島武郎 「想片」
・・・しかも今日においては、いっさいの発明はじつにいっさいの労力とともにまったく無価値である――資本という不思議な勢力の援助を得ないかぎりは。 時代閉塞の現状はただにそれら個々の問題に止まらないのである。今日我々の父兄は、だいたいにおいて一般・・・ 石川啄木 「時代閉塞の現状」
・・・女が上京すればますます淪落の淵に沈んで行くに違いないと思ったのと、救いがたい悪癖を持っているのに同情したのとで、何とかしてこれを救おうという心情を起し、物質的並に精神的方面より援助を与え彼女を品性のある婦人たらしめようと力を尽したのでした」・・・ 織田作之助 「世相」
・・・もっともこの測量には多大の費用がかかるのであるが、それは幸いに帝国学士院や、原田積善会、服部報公会等の財団または若干篤志家の有力な援助によって支弁され、そのおかげで次第に観測資料が蓄積され、その結果はわが国の有為な少壮学者らの手によって逐次・・・ 寺田寅彦 「地図をながめて」
・・・徳田さんの意味する愛情は、女対男の限られた範囲のものではなく、女の生活全面に配られるべき人間らしい思いやり、方策、現実的な援助としての愛情を、日本の婦人は実に貧寒にしか享けていないという意味なのであった。〔一九四六年一月〕・・・ 宮本百合子 「熱き茶色」
・・・父マルクスは、こういう時に、息子にむかって適切な忠告や、親切な男親しか出来ない慰めや援助をあたえた。カールは、この父を真心から愛し、尊敬した。父の五十五回目の誕生日のとき、ベルリン大学にいた十九歳のカールはお祝として、それ迄につくった四十篇・・・ 宮本百合子 「カール・マルクスとその夫人」
・・・地方そのものの文化的創造力は高めようとされず、その性格をより充実させ、高貴ならしめようとは援助されず、ただ、欲求だけをもっていて、それと引かえに与えられるいかがわしい一冊の本であった。一晩の観劇に対して、無抵抗に支払うものとしてだけ扱われて・・・ 宮本百合子 「木の芽だち」
・・・キュリー夫人は戦争の長びくことが分るにつれ、あらゆる手段を講じて、官僚と衝突してそれを説得し、個人の援助も求めて自動車を手に入れ、それをつぎつぎに研究所で装置して送り出した。そのようにして集められた車は二十台あった。マリアはその一台を自分の・・・ 宮本百合子 「キュリー夫人」
・・・未来のために与えられる一つの援助は、過去に向って与えられる賞讚よりも常に高貴であるという言葉を、新たな感動をもって思い浮べる次第です。〔一九四〇年五月〕 宮本百合子 「健康な美術のために」
・・・一、赤色陸海軍の機関誌、壁新聞、クラブ集会、文学の夕べ等にロカフは常に作品を送り、講演者を送って援助すること。一、プロレタリアの技術の一半として、正確な軍事知識を獲得し、普及すること。一、軍事活動に作家も参加すること、等。 ・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
出典:青空文庫